2011 Fiscal Year Research-status Report
学習記録の時系列分析による習熟プロセス階層モデルの可視化
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23700997
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Research Institution | Kobe Institute of Computing / Graduate School of Information Technology |
Principal Investigator |
吉田 博哉 神戸情報大学院大学, システム情報工学研究科(系), 講師 (00461153)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ポートフォリオ / 習熟度 / 知識モデル / 可視化 |
Research Abstract |
本研究の目的は,質の高い教育支援を実現するための,ポートフォリオシステムを開発する事である.国内の教育機関では,ポートフォリオシステムを活用する事で,学習記録を蓄積し,学習過程を含めた学習成果を評価・活用する仕組みが検討されている.しかし,学習成果を意識せずに作成したポートフォリオは,時系列に保存された学習記録でしかなく,学習成果に至る習熟状況の振り返りに活用出来ない.そこで本研究では,学習者が入力する学習記録から習熟度を判定すると共に,習熟度を時系列に分析する事で習熟プロセスを可視化し,学習成果に対する達成度を意識付けると共に,きめ細やかな指導を行う仕組みを提供する.平成23年度の実施において,「調査」「設計」「実装」「検証」の4フェーズに分けて研究を進めた.「調査」フェーズでは,既研究や文献,既製品,等の調査を行った.この結果,ポートフォリオや習熟度把握に関する現状を理解した.そして「設計」フェーズでは,調査結果を踏まえて,習熟度判定及び可視化に関する手法について検討した.同時に,本手法を組込む習熟度判定システム(ポートフォリオシステム)の機能設計を行った.そして「実装」フェーズでは機能設計した内容について実装した.最後に「検証」フェーズでは,実装した習熟度判定システムの有用性を確認するための実証実験を行った.本実験では,本研究で考案した習熟度判定及び可視化手法の妥当性を確認するために,従来の習熟度判定方法である穴埋め式問題の正答率と比較し,その差異を確認した.実証実験の結果,本システムで習熟度を判定し,指導に活用する事が出来た.一方,システムにより判定した習熟度よりも,穴埋め式問題による正答率の方が高い値を示す事が判明し,その原因について考察した.※ 2012年5月に研究会にて発表予定
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画では,「設計」フェーズにおいて,1)習熟度モデルを構築し,実際にシステムに組込む,2)時系列で分析した階層化習熟度モデルの設計,の2つの作業を想定していた.一方,平成23年度の実績では,1)は完了したものの,2)は完了には至らなかった.2)の作業が完了に至らなかった理由として,想定外の問題が発生した事が原因である.本年度の「検証」フェーズでは,実証実験を実施することで,開発したシステムを利用する事で,習熟度を判定,指導に活用する事が出来た.一方,従来の手法(穴埋め式問題による理解度確認)と比較して差異が発生した事から,その問題分析に想定外の時間を要した.実証実験で判明した問題には,学生がツールの操作方法になれていない点や,習熟度判定の入力データに前処理が必要な点以外に,習熟度判定アルゴリズム自体を見直す必要がある点,が挙げられる.特に,習熟度判定アルゴリズムの見直しに関しては,本研究の根本になるため,問題点を把握の上,対応策を検討した.平成24年度は,これら実証実験で判明した問題点を解決すると共に,本年度分の実施として計画していた時系列で分析した階層化習熟度モデルの設計について取組む.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,前年度の実績を踏まえて,「調査」「設計」「実装」「検証」「報告」の5フェーズに分けて研究を進める.まず,「調査」フェーズでは,平成23年度における実証実験の結果を踏まえ,当初の目的に未到達の項目について,その原因分析を行う.本フェーズでは,論文や文献の調査を実施する事で,対策立案を検討する.また,研究成果の一部を論文に取り纏める事で,第三者からの知見を獲得する.次に,「設計」フェーズでは,調査フェーズで検討した対策に対し,実現可能性を考慮の上,各種データモデルやシステムの設計を改良する.その後,「実装」フェーズでは,設計フェーズで改良した項目について,本システムを拡張すると共に,「検証」フェーズにて,その実現状況を検証する.検証方法については,講義での活用を想定した実証実験を実施し,本研究の有効性を確認する.この際,特定の学生のみならず,初学者や経験者など,様々な知識レベルの学生に対し,実証実験を行う.なお,本研究では,反復型開発プロセスを採用する.反復型開発プロセスは,調査・設計・実装・検証といった一連の研究プロセスを段階的に繰返す手法である.本研究では,1回の反復プロセスを4ヶ月程度とし,複数回繰返す事で,開発リスクを軽減すると共に,習熟状況の可視化手法を改善する.最後に,「報告」フェーズでは,研究成果を取り纏め,本研究で得た知見を公開する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用計画として,「調査」フェーズでは,既存調査では不足していた箇所の文献/論文調査を進める(文献/論文の購入費).また,学習履歴の可視化に関する最新動向を把握するために,各種セミナー/シンポジウムへ積極的に参加する(交通費,参加費).また,研究成果の一部を取り纏め,報告するために,各種学会が開催する研究会へ積極的に参加する(交通費,参加費).「設計」フェーズでは,研究費を利用する予定は無い.「実装」フェーズでは,設計した習熟度判定システムのうち,主要なアルゴリズムを除く部分(インターフェース/データ表現方法,等)に関して,前年度と同様に,企業へ開発を依頼する(業務委託費).「検証」フェーズでは,特定の学生のみならず,初学者や経験者など,様々な知識レベルの学生に対し,実証実験を実施する.実証実験に協力頂いた学生には,謝金を支払う(研究協力費).「報告」フェーズでは,取り纏めた研究成果を第三者に広く公表するために,論文誌への投稿(投稿費)や,研究代表者が管理するホームページに公開する(業務委託費).
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