2011 Fiscal Year Research-status Report
近代初期の解剖学と植物学における命名法と分類法についての比較研究
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23701008
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
澤井 直 順天堂大学, 医学部, 助教 (40407268)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 科学史 / 植物学史 / 解剖学史 / 分類 / 学名 / 専門用語 |
Research Abstract |
23年度はガスパール・ボアン(1560-1624)における植物の名称と人体各部の名称についての調査を中心に行い、同時にボアン以前の植物名・解剖名と比較を行った。まず、ボアンにおいて植物名と解剖名は似た構造をしていることがわかった。6000あまりの植物を記載する際に、種を示す語に同じ種に属する植物をさらに区別するための形容辞を付加した。これは種名+種小名という二名法の先駆けである。人体の各部分を記載する際には、骨や筋肉といった語に各骨や各筋肉を区別するための形容辞を付加した語を用いている。どちらにおいても、記載される対象の所属を表す語とそれぞれの特徴を表す語の二つの成分からなっている点で同等の構造を持つと言える。ボアン以前にこのような命名法が存在するかどうかについても調査した。解剖名についてはジャック・デュボワ(1478-1555)が同様の名称を創案していた。植物名についても16世紀の植物学書において同様の命名法が用いられていた。しかし、いずれの場合においても命名法が首尾一貫しておらず、またすべての植物・人体部分を網羅していなかった。ボアン以前の解剖学書・植物学書との比較から、ボアンの植物名・解剖名の意義について検討した。その結果、ボアンにおいては、上記の網羅性の問題が解消されており、またこの問題の解消のために二成分からなる命名法が首尾一貫して使用されたと評価できる。すなわち、ボアンには全植物・全人体部分を記載するという目的が根幹にあり、その目的のために最初に記載対象をいくつかの群へと分け、そしてさらに同一の群に属するもの同士を区別するという順序で分類して記述を行ったと解釈される。そしてボアンの命名法は、名称そのものによってどのような群に属しているか、また同じ群の他の構成要素と異なる特徴かを示すものであり、この分類操作を反映していると結論される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において中心的に扱う必要があると考えていたボアンについて、ボアン以前との植物名・解剖名の比較から歴史的位置づけのための足がかりができた。この点で、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ボアンの解剖学・植物学における分類・用語法をボアン以前のものと比較し、ボアンへの影響の有無を確認し、ボアンの分類・用語法の特徴を把握する。ボアン以降の解剖学・植物学書の分析を行い、ボアンとの関連について調査し、ボアンの分類・用語法の位置づけを行う。解剖学・植物学書以外でボアンに影響を与えたと想定される書籍・人物について調査し、科学・学術における分類・用語法という視点からボアンの位置づけを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、近代初期の解剖学・植物学に関する一次文献・二次文献を収集する。書籍等の大量の電子データが手元に集まってきたので、それを確実に保存するための機器を購入する。
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