2012 Fiscal Year Research-status Report
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23701009
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
北島 雄一郎 日本大学, 生産工学部, 助教 (40582466)
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Keywords | EPR状態 / ベルの不等式 |
Research Abstract |
アインシュタイン、ポドルスキー、ローゼン(EPR)は、空間的に離れた二つの粒子に関する状態が存在して、その状態において一方の粒子(この粒子を粒子1とよぶ)の位置Q1を測定することによって、もう一方の粒子(これを粒子2とよぶ)の位置Q2を確実に知ることができ、かつ、その波動関数において粒子1の運動量P1を測定することによって、粒子2の運動量P2を確実に知ることができるということを示した。そして、この状態をもとにして、量子力学は不完全であると結論した。 量子力学が不完全であるとすると、量子力学を完全にするような隠れた変数が存在することになる。それでは、隠れた変数は存在するのだろうか。この問題を考える際に重要なのは、ベルの不等式である。ベルは、局所的な隠れた変数を仮定すると、ある不等式が導かれることを示した。これがベルの不等式と呼ばれるものであり、この不等式が成立するかどうかは実験によって確かめることができる。そして実験の結果、ベルの不等式は破れていることが示された。したがって、ベルの不等式を導く際に仮定した条件のもとでは局所的な隠れた変数は存在しないことになる。つまり、これらの条件を妥当であるとするならば、EPRによる量子力学は不完全であるという結論は否定される。 本年度は、非相対論的量子力学のみならず相対論的場の量子論にも適用可能な枠組みである代数的量子論において、こうした一連の議論に現れる状態、つまりEPRが考えた状態とベルの不等式が破れる状態について考察した。まず、EPRが行った議論が成り立つような状態を定義した上で、そのような状態が数多く存在することを示した。さらに、この状態は常にベルの不等式を破るということを示した。こうした考察の結果、EPRの議論が成り立つ状態とベルの不等式を破る状態の論理的関係が明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた内容は、2013年2月18日にThe Fourth Nagoya Winter Workshop on Quantum Information, Measurement, and Foundationsにおいて発表した。そして、この発表内容は"EPR states and Bell correlated states in Algebraic Quantum Field Theory"と題した論文を現在執筆し、投稿中である。したがって、現在本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の1年目は、アインシュタイン、ポドルスキー、ローゼンの議論に対するボーアの反論、特に観測が空間的に離れた系に『力学的な擾乱』を与えることはないものの『その系の将来の振る舞いに関していかなるタイプの予言が可能なのかを定める諸条件そのものに対する影響』を及ぼすという箇所に注目し、この箇所はボーアによる古典的概念と客観性という考え方と整合的であるということを示した。しかし、これらの考え方からボーアの反論と同じ主張が導かれるかどうかは明らかではない。今後は、この点の考察を進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も本年度同様のスタイルで研究を進めていく。つまり、普段は論文、書籍を読み自分の考えをまとめ、研究会、学会等でそのアイデアを発表し、他の研究者との議論を通じて、そのアイデアを洗練させていくというスタイルである。したがって、次年度も研究費は主に書籍と研究会に参加するための旅費として使用する予定である。
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