2011 Fiscal Year Research-status Report
骨組織形態学的分析により、微小骨片から旧石器時代の狩猟獣を復元する
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23701014
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
澤田 純明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10374943)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | bone histomorphology / species identification / Pleistocene / Japanese Archipelago |
Research Abstract |
日本列島の旧石器時代遺跡から状態の良好な動物骨が出土した例はごく少なく、当該期の動物資源利用の様相はいまだ充分に明らかにされていない。本研究の目的は、これまで分析されてこなかった微小骨片からも情報を引き出すべく、更新世動物群を対象とした骨組織形態学的分析に基づく種同定法を確立し、これを遺跡出土骨片の研究に適用して、日本列島の旧石器時代の狩猟獣を復元することである。 2011年度は、完新世日本列島に生息する中・大型哺乳類、アジアゾウ、バイソン、および更新世に絶滅したナウマンゾウ・オオツノジカ・ニホンムカシジカの骨格から緻密骨の薄切標本を作成して、骨組織形態計測を実施した。この骨組織形態計測データをもとに動物種の組織形態学的識別基準を検討し、さらに、この基準を北海道柏台1遺跡から出土した更新世の微小焼骨片に適用して動物種の同定を試みた結果、この焼骨が中型シカ科に相当する可能性の高いことを明らかにした。この結果は、The 4th Annual Meeting of the Asian Palaeolithic Associationにおいて報告した。現在、これらの成果を論文にまとめ、投稿する準備を進めている。 そのほか、日本列島に近接する地域の更新世動物群から骨組織形態計測データを収集するため、ハノイのベトナム考古学院を訪問し、ホアビン省Hang Cho遺跡から出土した後期更新世の動物骨の整理と同定を行った。同遺跡出土資料の整理作業は2012年度も継続して行う予定である。 本研究の成果は、旧石器時代における動物資源利用の様相の実証的な解明に貢献するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
比較標本の収集とそれらの骨組織形態計測は当初の予定通りに進んでおり、更新世人類遺跡から出土した骨片の分析も実施した。その成果の一部を国際学会で発表したが、2011年度中の論文投稿には至らなかった。2012年度のなるべく速い段階で投稿すべく、現在準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 2011年度に引き続き、比較標本の骨組織形態計測データを収集する。2. 青森県尻労安部洞窟遺跡の発掘調査において採集された後期更新世の動物骨を整理し、肉眼では種の同定が困難な小片について骨組織形態学的検討に基づく同定を試みる。3. 日本列島の近隣地域の更新世動物群から骨組織形態計測データを収集するため、2011年度に引き続き、ベトナムのHang Cho遺跡出土更新世動物骨の整理と同定を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨組織形態計測に際し、試料の包埋とプレパラート作成に関する薬品、スライドガラス、カバーガラスを購入する。また、遺跡出土骨試料および比較動物骨標本の収集のため遺跡・研究機関を訪問する旅費、試料の採取と包埋を行う作業補助員への謝金、および成果発表のため論文の英文校閲料を計上した。 なお、次年度使用額は包埋に要した樹脂の費用が当初の見積もりより低く抑えられたために生じた金額である。これについては、試料の採取ならびに包埋の作業効率を向上させるため、平成24年度作業補助員の謝金に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)