2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23701018
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Research Institution | Yamanashi Prefectural Museum |
Principal Investigator |
植月 学 山梨県立博物館, その他部局等, その他 (00308149)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 馬産 / 在来馬 / 動物考古学 / 楕円フーリエ解析 |
Research Abstract |
本研究では、わが国において各時代にどのような系統の馬が飼育され、それが生産管理や流通とどのように関わっていたのかについて、遺跡出土馬歯の輪郭形状解析により解明することを目的としている。初年度は本方法の有効性の程度を評価することに主眼を置き、以下の分析をおこなった。・現生在来馬の馬歯形状分析 御崎馬の現生標本を対象に、集団内における変異の程度に関する基礎的データを収集することを目的としたが、実際には各地域の古代~中世遺跡出土標本よりも大きな形状変異が認められ、近世以降に多様な系統との交雑が進んだ可能性が示唆された。そこで、以後の分析は出土資料、特に古い時代の標本に重点を置くこととした。・加齢に応じた形状変化の解析 加齢に伴う摩耗によるエナメル質形状変化の影響を評価するため、一部標本について異なる年齢段階に対応する複数の断面画像をX線CTで撮影し、解析した。その結果、加齢による変化は大きいものの、地域間の差はそれを上回ることが明らかになった。つまり加齢変化をある程度無視しても地域差を抽出できることが明らかになった。・遺跡出土馬歯調査 今年度は秋田県、群馬県の出土馬歯の調査をおこない、これまでに収集した東日本の他地域の結果と比較した。その結果、群馬県の古代標本は山梨の古墳・古代標本に近い位置にプロットされ、同じ群馬県内の中世以降の標本とは分布が異なっていた。秋田県の古代標本も同様に山梨の古墳・古代に近い位置にあり、同じ北東北の青森県の中世遺跡とは差が見られた。両地域の古代の傾向は、馬産導入初期において限定された系統の馬が飼育されていたことを示す可能性がある。特に秋田県の結果は、8世紀以降馬産地として新たに浮上してくる北東北の馬の系統を解明する上で注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた(1)現生在来馬の馬歯形状分析、(2)加齢に応じた形状変化の解析、(3)遺跡出土馬歯調査のすべてに着手することができた。しかし、出土馬歯の全国的な比較分析という最終的な目標からすると、3県の調査はやや少ない。
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Strategy for Future Research Activity |
現生在来馬の変異が意外に大きく、歴史的経過の影響を複雑に受けていると推測されたことから、遺跡出土馬の調査を重点的に進める必要がある。遺跡出土馬については、東日本を中心とする比較的狭い範囲での調査にとどまっており、より広域的な比較を通じて、馬産導入期に近い古墳時代や古代遺跡でどの程度の地域的変異があるのか、あるいはそこから伝播の経路や故地が特定できるのかを追究していく。また、より変異が大きく、状況が複雑化する中世以降についても、どの程度地域的傾向を抽出できるのかについてさらに広域的な比較を進めていく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は遺跡出土馬以外の調査もおこなったため、充分な資料が集められなかった。次年度は遺跡出土馬に対象を絞って広域的な比較をおこなうと共に、1遺跡当たりの馬歯出土数が多い地域の調査を重点的に進めることで、資料の蓄積をはかる。このため、旅費、人件費共により多く必要となる予定である。
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Research Products
(5 results)