2012 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧種トビハゼの保全に向けて大学博物館が取り組む環境教育プログラム
Project/Area Number |
23701022
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 則雄 広島大学, 総合博物館, 助教 (70437614)
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Keywords | 準絶滅危惧 / トビハゼ / 干潟 / 分布 / 環境教育 |
Research Abstract |
本研究では、絶滅危惧種トビハゼの広島県沿岸部における生息場所を2000年以来11年ぶりに確認できた。唯一の生息環境と考えられた福山市松永湾以外にも、生息地を新たに確認できたため、広島県下有数の干潟9地点(県西部2ケ所、中部4ケ所、頭部3ケ所)における本種の生息確認調査を実施した。その結果、備後灘に面する県東部では生息数の際立った干潟が存在していたが、広島湾に面する県西部では生息が確認できなかった。両水域をつなぐ安芸灘に面する中部域では、ほとんどの調査地点で幼魚のみの確認にとどまり、再生産に関与する成魚の存在は認められなかった。広島県の代表的干潟における本種の生息が、県東部に集中し、中部海域の本種の過去の生息場所を中心として本種の生息状況が危機的状況にあることを具体的に明らかにできた。また、2012年度の調査では、前年度の課題であった本種の求愛行動を含む繁殖行動を複数の巣穴で確認できた。さらに本種の巣穴の必要条件として巣穴の基質となる軟泥部分の深さが約30cm程度必要であることも確認できた。 これらの成果を大学博物館を媒介とした一般市民向けの講演会、シンポジウム、干潟での野外観察会、公開企画展「命のゆりかご~瀬戸内海の多様な生態系~」の形で連続的に実施する環境教育プログラムとその評価を行った。特異な生態を有する本種を鍵に、干潟の生物多様性・自然浄化能の重要性が周知できた。プログラムの補助ツールとして巣穴の樹脂標本やハンディージオスライサー、干潟のジオラマ等が高評価を得た。一方、参加者の連続した参加が難しく具体的な保全策の検討には課題を残した。 これらの成果は、学術論文、研究会で発表を行い研究者向けに成果を発信した。本成果はマスコミにも取りあげられ、レッドデータブックひろしま2011に同種が初記載されるなど大学博物館の調査研究・情報発信力を活用した環境教育の実践例を示した。
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