2012 Fiscal Year Research-status Report
博物館標本から再構築する日本の干潟生物相の変遷とその保全への活用
Project/Area Number |
23701025
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Research Institution | Osaka Museum of Natural History |
Principal Investigator |
石田 惣 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (50435880)
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Keywords | 市民参加型調査 / 博物館連携 / 干潟 / 標本記録 / 底生生物相 / 古地図 / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
(1)1950年代以前に国内で採集された干潟棲貝類標本の探索及びデータベース化:福井市自然史博物館、ドレクセル大学附属自然科学アカデミー(米フィラデルフィア)、フィールド博物館(米シカゴ)、山口県立山口博物館、国立科学博物館、陸前高田市立博物館、山形県立博物館等が所蔵する貝類標本から、主に1950年代以前に日本国内で採集された干潟棲貝類の標本記録の調査を行った。その結果、主に東京湾、三河湾、大阪湾などを中心とする海域ですでに絶滅、もしくは著しく減少した種の標本を多数発見した。また、文献記録にはない種も標本記録として見いだした。これらの種・採集地・採集時期をデータベース化することで、高度経済成長期以前の都市域の内湾干潟の貝類相の再構築を試みた。 (2)瀬戸内海沿岸各地の干潟における比較生物相調査:瀬戸内海で良好な干潟環境が残っている愛媛県燧灘沿岸干潟、山口県・大分県周防灘沿岸干潟等で地形環境及び生物相の調査を行い、現在の大阪湾の生物相や地形環境との比較を行った。その結果、ヨシ帯や干潟の一定面積の残存が生物相の維持に必要とする推論を行った。 (3)国内各地の干潟における過去の生物相に関する文献調査:当年度は主に大阪湾(大阪府域)について、明治期から現在までの汽水域・砂浜域での生物相を探るため、生物相調査報告、生物出現記録、その他文献記録を渉猟した。その結果、大阪湾域でのファウナ・フロラリスト(総数約500種)を作成した。 (4)国内各地の過去の沿岸地形の文献調査:江戸期から高度経済成長期を経て現在に至るまでの沿岸地形の変化について、当年度は大阪湾に注目し、絵図、海図、地形図、絵葉書などの文献記録から主に湾奥部の地形の変遷を記録した。その結果、明治の築港期でも湾奥に比較的広大な河口干潟が形成されていたことを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度時点では標本調査が遅れていたが、平成24年度に重点的に標本調査を行うことで、全体計画の遅れを回復した。また、過去の標本記録からは想定していた以上の情報が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去から現在に至る干潟環境及び生物相の変遷を探る上で、海域を絞り込む必要があると考えられた。そこで、文献や標本記録が豊富で、かつ現在も多数の市民・職業研究者がフィールドにしている大阪湾と東京湾に注目することにする。これらの海域で引き続き標本記録・文献調査を継続し、干潟環境・生物相の時空間的変遷を再構築する。 また、高度経済成長期を境として消失または増加した干潟棲生物の抽出を行い、瀬戸内海各地の現在の生物相と比較することで、その要因解析を行う。そのため、瀬戸内海各地での調査を継続して行う。 それらを踏まえて、「干潟の要注目種」の選定作業を進めることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、明治から昭和初期の古地図や海図、その他文献の購入費に充てる予定である。 旅費については、主に学会発表等に充てる予定である。 人件費・謝金については、文献情報及び標本情報のデータベース化作業を行うアルバイト人件費に充てる予定である。 その他経費については、文献複写費に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)