2012 Fiscal Year Research-status Report
地方都市における高齢者の人口移動と地域再生に関する研究
Project/Area Number |
23701034
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
小池 司朗 国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 第2室長 (80415827)
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Keywords | 北海道 |
Research Abstract |
初年度に引き続き,CSIS(東京大学空間情報科学研究センター)の共同研究において提供を受けている研究用空間データ基盤を利用した分析を進めている。本年度はこの共同研究において提供された地域メッシュ統計,および国土数値情報のDIDデータや鉄道時系列データ等を用いて,主に北海道を対象地域とし,鉄道廃止に伴う沿線人口変化の分析,および人口ポテンシャルの観点から評価した地方都市中心地における中心性の変化に関する分析を行った。 前者については,現存駅と廃駅の双方から近い距離に位置する地域での人口減少率が著しいことから,個別の鉄道路線の廃止よりもむしろ,相次ぐローカル線の廃止による鉄道ネットワークの縮小が、とりわけ鉄道駅を核として成長してきた中心地の人口減少に大きな影響を及ぼした可能性が高いという考察結果が得られた。 また後者については,1970年代以降札幌圏以外の大半の地方都市中心地では中心性の低下がみられるものの,圏域人口の減少率が高いほど中心地の相対的な人口集積は維持される傾向があり,65歳以上の高齢者に限ってはその傾向がより強く認められた。こうしたことから今後,人口減少や少子高齢化がさらに加速していくなかで,地方都市においても近年における大都市と同様に,これまで一般的に観察されてきた人口分布の郊外化から再度集中化へとシフトしていく可能性が示唆された。 本研究においては,都市内人口移動の傾向から交通体系の再編を中心とする地域計画を立案することを大きな目的としているが,本年度の分析からは,公共交通機関の整備を軸とした計画の重要性が示されたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道の地方都市を対象として,交通網と人口分布との関連や圏域人口変化と中心地の人口集積との関連等について興味深い知見が得られ,研究はおおむね順調に進展しているといえる。ただし本年度後半は,研究所の主な業務である地域別将来人口推計が大詰めを迎えたことなどから,当初予定していた交通網以外の地理的条件との重ね合わせ分析や,高齢者と他の年齢層の人口移動傾向の違いに関する詳細な分析までは行うことができなかった。これらについては次年度前半に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度の前半は,市町村合併や土地利用・地価・地形などと人口移動・人口分布変化との関連について,国土数値情報や最近公表された平成22年国勢調査の地域メッシュ統計等を用いた分析を行う。そのなかでは年齢別の人口分布変化に焦点を当て,とくに高齢者の人口移動との関連に重点を置いた分析を行う。年度後半は,これまでに得られた分析結果と知見をもとに,人口減少・少子高齢化時代において持続可能な地方都市とするための地域計画の方向性を模索する。その具体的な例として,分析対象とした地方都市のなかからモデル都市を選定し,「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」による将来推計人口を踏まえつつ,施設再配置や交通体系の再編を中心テーマに据えた地域計画案を提示する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後分析対象とする都市・地域が増加し,利用する電子データも多くなるため,GISソフトが稼働する高スペックのパソコンと各種データを保存するハードディスク等を購入する予定である。このほか,モデル都市の視察を行うための旅費と最終報告書作成のための費用を計上する。
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