2013 Fiscal Year Research-status Report
地方都市における高齢者の人口移動と地域再生に関する研究
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23701034
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
小池 司朗 国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 第二室長 (80415827)
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Keywords | 東日本大震災 / 人口移動 / 人口減少 / 公共交通機関 |
Research Abstract |
今年度の研究実績としては主に二つ挙げられる。一つは,東日本大震災に伴う人口移動傾向の変化に関する分析であり,総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」などを利用し,震災前後における岩手・宮城・福島の3県の人口移動傾向の変化について,都道府県別・市区町村別の分析を行った。その結果,震災発生直後には人口移動傾向の大きな変化がみられたが,その後は全体として震災前の傾向に回帰する動きが認められた。しかし,仙台市においては転入超過傾向の拡大が続く一方で,震災の被害が大きかった地域においては震災後における復興事業の進捗状況によって転出超過の回復傾向に違いがみられるなど,新たな動きも観察された。復興計画の実現可能性には,地域人口の動向が大きなカギを握っていることが明らかになった。もう一つは,地方都市におけるインフラと人口分布に関する分析の一環として行った鉄道廃止前後における廃線沿線の人口変化についての分析である。北海道を対象地域とし,平成22(2010)年の国勢調査による地域メッシュ統計も含めて分析を行った結果,廃線沿線においては廃止前から人口減少が観察されており,鉄道の廃止が人口減少に拍車をかけた形跡は認められなかった。その一方で,現存する鉄道と廃線との結節点となっていた鉄道駅周辺における人口減少が著しいことから,鉄道ネットワークの縮小が鉄道駅を核として発展してきた比較的鉄道への依存度が高い地方都市の衰退に大きな影響を及ぼしたことが推察された。北海道においては札幌圏も含め,今後いっそうの人口減少・少子高齢化が避けられない情勢にあり,こうした状況下においては公共交通機関の重要性がより高まっていくと考えられる。本研究からは,公共交通機関を何らかの形でネットワークとして再構築することが,当該地域の人口減少緩和のための有効な一策であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ取得と分析自体は概ね順調に進展しており,最近公表された平成22年国勢調査による地域メッシュ統計を用いた地方都市の都市内人口分布変化を中心とした分析を継続させている。具体的な成果の一つとして,研究実績の概要で述べた鉄道廃線に伴う沿線人口変化の分析が挙げられる。しかし昨年度は,国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」の公表に伴う作業が予想をはるかに超えたこと,当初の予定を変更して東日本大震災に伴う人口移動傾向の変化に関する分析を行ったことなどにより,具体的なモデル都市の選定および高齢者の人口移動傾向を勘案した地域計画の方向性の提示までには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる今年度の前半は,都市内人口移動や人口分布変化に関して,地方都市間の比較に焦点を当てた分析を行う。そのなかでは,都市内インフラや地形などの地理的条件に関するデータを併用し,GIS(地理情報システム)を用いた分析に力点を置く。年度後半は,分析結果等をもとにモデル都市を選定し,主に高齢者の人口移動および施設配置・公共交通再編の観点から,持続可能な地域を見据えた地域計画の方向性を提示すると同時に,今後の地方都市のあり方を一般化させる形で論じることを最終的な目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで都市内人口分布および人口移動に関する分析を中心に進めてきたが,分析の過程で,複数都市において同様の比較分析を行う必要性に駆られた。また昨年度,当初の予定を変更して東日本大震災に伴う人口移動傾向変化に関する分析を行った結果,研究計画の見直しにより未使用額が生じた。 未使用額は,主に他都市における実地調査の出張費,および研究成果報告のための出張費に充てることとしたい。
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