2011 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺濾胞癌の発症におけるリン脂質代謝酵素の機能解析
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23701036
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小藤 智史 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00508153)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 遺伝子改変動物 |
Research Abstract |
イノシトールリン脂質(PIPs)はイノシトール環の 3, 4, 5 位水酸基が可逆的なリン酸化を受ける結果、生体膜に生ずる 8 種類のリン脂質群の総称である。多様な細胞外シグナル分子による細胞生理応答惹起を仲介する細胞内シグナル分子として、PIPs は重要な役割を果たす。その代謝異常は様々な疾患を引き起こし、その中にはp53と並び、がん抑制遺伝子としてよく知られた代謝酵素としてホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸を代謝するPTENが挙げられる。近年、新たながん抑制遺伝子候補としてホスファチジルイノシトール3,4-二リン酸を代謝する酵素であるINPP4Bが注目されつつある。INPP4Bの生理的役割を調べるために、ノックアウトマウスを作製しその解析を行った。その結果、予想に反して、このマウスは正常に発育し、がんの発症は見られず、その生存曲線も野生型と変わらないものであった。INPP4BとPTENが代謝するそれぞれのリン脂質はともに、癌原遺伝子として知られるAktの活性化を引き起こす。そこで、両者に関係があるのではないかと考え、INPP4BとPTENの二重欠損マウスを作製したところ、甲状腺において有意にがんの発症が促進されることが明らかとなった。さらに、この甲状腺癌は肺への転移を高頻度で引き起こすことを見出した。この発症の原因を調べるために、シグナル伝達の検討を行ったところ、二重欠損マウス由来の甲状腺においてPI3K-Aktシグナル経路の明らかな亢進を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した、甲状腺濾胞癌病変部位におけるタンパク質レベルでの変化の検討については、研究実績の概要で述べたように、二重欠損マウス由来の甲状腺においてPI3K-Aktシグナル経路の明らかな亢進を見出すことに成功しており、甲状腺癌培養細胞を用いた検討については、検討のための準備が整いつつある。また、組織特異的な遺伝子欠損マウスの作製では、次年度のための解析の準備が進んでおり、研究の目的を果たすための研究計画通りに進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、交付申請書に記載した計画に従い、前年度に作製準備を行った組織特異的な遺伝子欠損マウスを用いて、甲状腺以外の臓器における検討を行う。また、癌細胞の移植実験により、細胞自律的もしくは非自律的な影響を探る。さらには、現在掛けあわせているPTEN以外の癌抑制因子の欠損マウスとの掛け合わせにより、PI3K経路以外を制御する因子との二重欠損マウスにおいて癌の発症の有無を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画を実行するために必要なマウス作製のための試薬や、学会発表、及び研究の打ち合わせなどに対して使用する。
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