2012 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺濾胞癌の発症におけるリン脂質代謝酵素の機能解析
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23701036
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小藤 智史 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教育系補佐員 (00508153)
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Keywords | 脂質 |
Research Abstract |
イノシトールリン脂質(PIPs)はイノシトール環の 3, 4, 5 位水酸基が可逆的なリン酸化を受ける結果、生体膜に生ずる 8 種類のリン脂質群の総称である。多様な細胞外シグナル分子による細胞生理応答惹起を仲介する細胞内シグナル分子として、PIPs は重要な役割を果たす。前年度までに申請者は新たながん抑制遺伝子候補である、ホスファチジルイノシトール3,4-二リン酸代謝酵素、INPP4B のノックアウトマウスを作製し、このマウスは、予想に反して、癌の発症など明らかな異常は見られず、その生存曲線も野生型と変わらないものであったが、他の遺伝子の欠損マウスと掛け合わせるなど詳細な解析を行った結果、新たな甲状腺癌発症モデルの作出に成功したことを報告した。本年度はこのマウスを用いて、免疫染色やウエスタンブロットによるシグナル伝達の検討など様々な解析を行った結果、甲状腺癌の発症に際して INPP4B が担う新しい抑制機構の存在を示唆する結果を得た。近年、INPP4B は悪性度の高い乳癌や卵巣癌において高頻度に欠損すること、また、前立腺癌を発症した患者において INPP4B の発現量の低下が予後に影響を与えることが報告された。これらのことから考えると、本研究において明らかとなった INPP4B が担う新しい癌発症の抑制機構の存在は今後の癌研究に重要な意味を持ち、癌治療の観点からも新しい創薬ターゲットの一つとして注目を浴びることが期待される。
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Research Products
(3 results)