2011 Fiscal Year Research-status Report
B型慢性肝炎におけるTGFーBシグナル伝達機構の臨床応用
Project/Area Number |
23701039
|
Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
村田 美樹 関西医科大学, 医学部, 助教 (10533416)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | Smad3リン酸化 / B型慢性肝炎 |
Research Abstract |
【目的】リン酸化Smad3シグナル伝達の視点から、抗ウイルス療法後のB型とC型慢性肝疾患の病態を比較検討した。【方法】B型慢性肝疾患に対して核酸アナログ治療を施行した27症例、ならびにC型慢性肝疾患に対してIFN治療を行った31症例において治療前後の肝生検組織を用い肝でのSmad3リン酸化及び標的遺伝子発現につき検討を行った。【結果】(1) B型慢性肝疾患での検討では、核酸アナログ治療に伴い肝線維化(F因子)は1.0/ 年の割合で改善した。HBV-DNA量の低下と炎症の改善に伴い、Smad3Lリン酸化ならびに標的遺伝子であるc-Myc発現の著明な減少が認められ、抑えられていたpSmad3Cを介する癌抑制シグナルの復活がみられた。(2) C型慢性肝疾患での検討では、炎症の改善に伴いF因子は0.2/年の割合で改善し、pSmad3LからpSmad3C経路への回帰が観察されたが、B型肝炎と比較して緩徐な変化であった。(3) C型慢性肝炎のSVR後発癌群(10症例)は、非発癌群(21症例)と比べて線維化の進展症例が多く、高Smad3Lリン酸化・低Smad3Cリン酸化で癌化シグナルの優位な状態がIFN治療後も持続していた。【結論】B型慢性肝疾患では抗ウイルス療法により、線維化・癌化シグナルが早期に改善するために発癌リスクは低下する。一方でC型慢性肝疾患では、SVR後でも線維化・癌化シグナルが残存しており、ウイルス以外の因子も発癌に影響する可能性が示唆された。抗ウイルス療法後の肝でのSmad3リン酸化は、慢性肝炎患者が高発癌状態から脱却出来たかを知るバイオマーカーとなることが期待され、さらに発癌ハイリスク群の絞り込みや、肝発癌予防への応用も期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検討内容としては、B型慢性肝疾患に対して核酸アナログ治療を施行した27症例、ならびにC型慢性肝疾患に対してIFN治療を行った31症例において治療前後の肝生検組織を用いて肝でのSmad3リン酸化につき検討を行った。当初はB型慢性肝炎についてのみの検討を考えていたが、以前我々がB型慢性肝炎とC型慢性肝炎についての発癌過程につき検討した結果を背景に、抗ウイルス療法前後での治療効果をSmad3リン酸化で評価し、またB型慢性肝炎とC型慢性肝炎との比較検討も重要であると考え、解析した。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年はB型肝炎、C型肝炎に注目しその臨床的病態を細胞内のシグナル伝達の側面から解析した。特に抗ウイルス療法の前後のシグナル伝達の偏向を肝組織標本をもとに解析したが、今年度はさらに症例を重ねて行きたいと考えている。さらにin vitroでHBx導入肝細胞を用い、肝細胞でのSmad3リン酸化の検討を行う予定。また、昨年度より急性肝障害時の肝再生にも興味を持ち、これに関しても慢性肝炎との相違点も踏まえながら研究を進めて行きたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に続き肝組織の免疫組織染色は追加で行う。In vitroでの検討として、HBx遺伝子をラット肝細胞(Clone9細胞)へ導入した細胞を用いてTGF-β刺激に伴うSmad3の部位特異的リン酸化について検討する。さらに培養HBx導入肝細胞におけるSmad3リンカー部リン酸化阻害、あるいはJNK阻害剤によるSmad3リン酸化への影響についても検討する。さらに核酸アナログ製剤添加によるSmad3リン酸化の検討も加える。その他急性肝障害時の肝臓組織標本についても、免疫組織染色、蛍光抗体法を用いて検討し、慢性肝炎との相違点や、急性肝障害時の再生に関わる肝星細胞について着目したいと考えている。
|
Research Products
(3 results)