2011 Fiscal Year Research-status Report
脂質ラフトによるSrc制御機構の総合的理解に向けた研究
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23701056
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梶原 健太郎 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (30581102)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / スフィンゴ脂質 / 発がん |
Research Abstract |
がん原遺伝子産物c-Srcは、多くのがん細胞において高発現・活性化していることから、その制御機構の解明は重要な課題である。我々はこれまでにc-Srcの不活性化因子Cskとその足場タンパク質Cbpを見いだし、制御機構がタンパク質レベルで明らかになりつつある。さらにc-Srcの不活性化は脂質ラフトで起こることを明らかにしてきた。本研究はc-Src制御機構の更なる理解を目指して、ラフトの構成分子である脂質からアプローチするものである。ラフト構成脂質の変化の解析:c-Src発現誘導細胞を用いて、がん化に伴う変化を解析し、以下の成果を得た。1)がん化に伴いc-Srcはラフト外に移行することを明らかにした。この現象は他のラフト局在タンパク質でも起こることを確認した。2)このときラフト構成脂質であるスフィンゴ脂質およびコレステロールの代謝が変動していることを見いだした、この変化は、がん化に伴いラフトの構造が異常となる可能性を示唆するものであった。3)ラフト構成脂質の変動の原因は脂質代謝系遺伝子の発現レベルでの制御であることを見いだした。4)がん化に伴うスフィンゴ脂質の代謝の変動を阻害剤で抑制すると、c-Srcのラフト外への移行を部分的に抑制することが出来た。以上の結果から、がん化に伴いラフトが変化することでc-Srcは不活性化から逃れ、活性化状態を維持していると考えられる。膜動態の変化の解析:スフィンゴ脂質代謝の生化学的解析から、がん化に伴い膜流動性の変化が生じている可能性を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラフト構成脂質の変化の解析:当初の目標である「がん化初期における脂質代謝の変動」と「c-Src制御機構における脂質代謝の変動の意義」を明らかにすることができた。膜動態の変化の解析:膜流動性の解析は動物細胞用のシステムを立ち上げる必要が生じたが、研究協力者である阿部文快博士(青山学院大)のサポートを受けるに至った。また脂質解析から、膜流動性の変化を示唆する結果を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
ラフト構成脂質の変化の解析:スフィンゴ脂質の代謝変動に関与する遺伝子を見いだしている。この遺伝子を中心とした解析を推進する。またモデル細胞だけでなく、ヒトがん細胞をもちいた解析をすすめる。膜動態の変化の解析:膜流動性の解析は、研究協力者である阿部文快博士と連絡を取りながら解析する。協力関係は確約済みである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の使用見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初の予定通りの計画を進めていく。最終年度の平成24年度は構築済みの実験系での解析が中心となるため、消耗品費にウェイトをおく。研究遂行に必要な装置設備は購入しない。また成果報告を目的とした学会参加と論文校閲を考えている。
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Research Products
(3 results)