2011 Fiscal Year Research-status Report
生体内でのRas発がんに対する転写因子Bach1の機能解析
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23701066
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
坂原 瑞穂 公益財団法人がん研究会, がん研究所細胞生物部, 研究員 (00572314)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Ras発がん / Bach1 / 皮膚扁平上皮がん / 膵臓がん / マウス |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒトのがんで最も高頻度に活性化変異が同定され、Ras発がんモデルマウスの系が確立している皮膚と膵臓に焦点を絞り、p53依存性細胞老化の亢進がみられるBach1に着目し、生体内におけるRas発がんの過程を明らかにすることである。1.皮膚扁平上皮がん(SCC)発症モデルマウスを用いたBach1の機能解析今回用いたK5-Hrasトランスジェニック(Tg)マウスは、第13番染色体上ptch遺伝子の多型がSCC発症に影響を与える。C57BL/6(B6)系統はSCCの発生に抵抗性を示し、FVB系統は感受性が強い。そこで、FVB系統K5-Hras TgマウスをB6系統マウスと戻し交配を繰り返し、ptch遺伝子近傍のみをFVB由来にし、遺伝的背景とSCC発症時期等の関係を調べた。戻し交配第10世代マウスについて、マイクロサテライトマーカーを用いたPCR解析を行った。第13番染色体は、ptch遺伝子の上流10.6Mb/下流21.8MbまでB6に置き換わった。また、第13番以外の染色体は、調べたマイクロサテライトマーカー138種類全てがB6由来を示し、ptch遺伝子近傍のみがFVB由来のマウスを得ることが出来た。得られたマウスのうち、ptch遺伝子の遺伝的背景がFVB/FVB系統の場合、生後4週までに約69%(13匹中9匹)のマウスがSCCを発症した。一方、FVB/B6系統(16匹)では生後4週までの発症は観察されなかった。また、SCC発症におけるBach1の機能を検討するため、前述のSCC発症モデルマウスと全身性Bach1欠損マウスを交配し、解析対象のマウスを得た。2.膵臓がん発症モデルマウスを用いたBach1の機能解析膵臓がんの前がん病変PanINを発症するモデルマウス(KrasG12D/Ptf1a-Cre)と全身性Bach1欠損マウスを交配し、解析対象のマウスを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、マウス個体内の発がん過程の解析が軸となっており、研究実施計画の中で最も時間を要すると考えられるのは、Bach1を欠損した解析対象マウスの作製である。この点については、平成23年度内に目的の解析対象マウスを得ることが出来た。また、皮膚や膵臓でのRas発がんにおけるBach1の機能を解析するため、比較対象となるマウスの発症時期等の基礎データを得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られたマウスの経過観察を引き続き行う。1.SCC発症モデルマウスを用いたBach1の機能解析遺伝的背景と腫瘍の発生頻度や発生部位・発生時期等の関係について検討する。また、Bach1を欠損したマウスに関しても、同様の比較を行い、SCC発生とBach1の関係について検討する。2.膵臓がん発症モデルマウスを用いたBach1の機能解析コントロールマウスと全身性Bach1欠損マウスについて、PanIN等の病変発生率および悪性度等の比較を行い、前がん病変発生から悪性転換におけるBach1の働きについて検討する。また、上記2種類の研究結果をまとめ、それぞれの解析結果を比較することにより、皮膚と膵臓、発がん母地の違いによるBach1の機能の違いについても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行するにあたり、遺伝学的・分子細胞生物学的・生化学的・組織学的解析等の解析を行うため、これらの実験に使用する試薬等の消耗品を購入する。
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