2011 Fiscal Year Research-status Report
新規アクチン細胞骨格制御因子TAB182を介したがん浸潤機構の解明とその制御
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23701068
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
大石 智一 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 研究員 (50442546)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アクチン細胞骨格 / 細胞運動 / ポリADP-リボシル化 |
Research Abstract |
本研究はポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)ファミリーの一員であるタンキラーゼ1新規結合蛋白質TAB182の破綻がどのようにがんの細胞運動・浸潤に関与するのか、またタンキラーゼ1によるTAB182の制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の結果を得た。TAB182の細胞内局在を詳細に検討した結果、アクチン細胞骨格上に局在することを見いだした。ヒト繊維肉腫HT1080細胞を含む複数のヒトがん細胞株を用いてTAB182に対する低分子干渉RNA(siRNA)を導入すると、アクチン細胞骨格の再構成に関与するシグナル伝達経路の活性化および細胞運動の亢進を引き起こした。そこで、同経路の活性化を特異的に阻害する薬剤を処理したところ、細胞骨格の再構成および細胞運動が抑制できたことから、TAB182の発現低下がアクチン細胞骨格の再構成を介した細胞運動亢進に寄与することが示唆された。さらに臨床がんとの関連を検討した結果、正常組織にくらべTAB182の発現低下をみとめるがん種を見いだした。次に、タンキラーゼ1によるTAB182の制御機構の検討を行った。タンキラーゼ1は細胞内で様々な部位に局在することから、核または細胞質にタンキラーゼ1を安定に発現するHT1080細胞株を樹立した。これらを用いてアクチン細胞骨格への影響を検討した結果、細胞質にタンキラーゼ1を発現する細胞がそのPARP活性に依存してアクチン細胞骨格の再構成および細胞運動の亢進を引き起こすことを見いだした。今回、TAB182がアクチン細胞骨格の再構成を介して細胞運動の制御に関与すること、タンキラーゼ1がTAB182の機能を制御している可能性を見いだした。これらの制御機構の解明を行うことにより、TAB182およびポリ(ADP-リボシル)化修飾シグナルを標的とした新たながん治療法の確立につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、概ね当初の予定通り研究が進んでいる。次年度も研究計画に沿って研究を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿った研究を行うが、次年度に行う予定であるTAB182ノックアウトマウス同士の交配による表現系の変化の解析は長期観察が必要であるため、場合によってはそれ以外の実験を優先する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画どおり研究費の大部分を消耗品費に使用する予定である。また研究成果の発表を行うための旅費、論文執筆に必要な謝金、論文出版費なども費用に計上している。
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