2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規アクチン細胞骨格制御因子TAB182を介したがん浸潤機構の解明とその制御
Project/Area Number |
23701068
|
Research Institution | 公益財団法人がん研究会 |
Principal Investigator |
大石 智一 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 研究員 (50442546)
|
Keywords | アクチン細胞骨格 / 細胞運動 / ポリ(ADP-リボシル)化 |
Research Abstract |
本研究はポリ(ADPリボース)ポリメラーゼファミリーの一員であるタンキラーゼ新規結合蛋白質TAB182の破綻がどのようにがんの細胞運動・浸潤に関与するのか、またタンキラーゼによるTAB182の制御機構を明らかにすることを目的としている。 1) TAB182の発現低下による細胞運動・浸潤の亢進 HT1080細胞株を用いてアクチン細胞骨格上に局在するTAB182を枯渇させると、ROCK(Rhoキナーゼ)の活性化を介したアクチン細胞骨格の再編成が誘導され、細胞運動・浸潤能の亢進が観察された。一方、ROCK阻害剤を処理することによりそれらの現象が抑制できたことから、TAB182の枯渇はROCK経路の制御に関与することが考えられた。また、臨床がんとの関連を検討した結果、いくつかのがん種で正常組織に比べがん組織でTAB182の発現低下が観察された。これらのことから、TAB182の発現低下がある種のがんの進展に寄与していることが示唆された。 2) タンキラーゼによるTAB182の制御 タンキラーゼは細胞内で様々な部位に局在することから、核または細胞質にタンキラーゼを安定に発現するHT1080細胞株を樹立し検討した結果、細胞質にタンキラーゼを発現する細胞がポリ(ADPリボシル)化に依存してROCK経路の活性化を介したアクチン細胞骨格の再構成および細胞運動の亢進を引き起こすことを明らかにした。この時、TAB182自体の発現低下が観察されなかったことから、タンキラーゼによるTAB182のポリ(ADPリボシル)化の関与が示唆された。 今回、TAB182がROCKの活性化を介した細胞運動・浸潤の制御に関与すること、さらにタンキラーゼの活性がTAB182の制御に関与している可能性を見いだした。これらの解明を行うことにより、TAB182やタンキラーゼを標的とした新たながん治療法の確立につながることが期待される。
|