2011 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍細胞死に伴う、腫瘍随伴マクロファージ集積機構の解明
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23701078
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
西躰 元 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (60509941)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞免疫 / マクロファージ |
Research Abstract |
悪性腫瘍は免疫系からの攻撃を免れているが、その免疫抑制状態の維持に、腫瘍に随伴するマクロファージが関与していることが近年報告されている。しかし宿主由来のマクロファージが何故腫瘍に浸潤し、増殖を助ける性質を持つに至るのかは不明である。我々は、マクロファージが死細胞を貪食し、免疫抑制を誘導する性質が腫瘍の増殖に利用されている可能性を考え、腫瘍細胞死誘導後の腫瘍随伴マクロファージの変化を調べた。その結果腫瘍細胞死誘導に伴って、免疫抑制性マクロファージの腫瘍への集積を認めた。集積したマクロファージの遺伝子発現をマイクロアレイにより調べたところ、白血球走化性因子として知られるS100A8、S100A9の高発現を認めた。そこでin vivoにおいてS100A8、S100A9の機能を阻害し、腫瘍へのマクロファージの集積を阻害することを目的として、S100A8、S100A9に対するモノクローナル抗体の作製を行った。ラットのfoot padにリコンビナントマウスS100A8、S100A9タンパクを週1回、計3回免疫し、3回目の免疫から3日後、リンパ節を回収した。次にリンパ節細胞とミエローマを融合し、ハイブリドーマを作製した。ハイブリドーマ培養上清を用い、ELISA法によるスクリーニングを行った結果、S100A8特異的な抗体を産生するハイブリドーマが7クローン、S100A9特異的抗体産生ハイブリドーマが2クローン得られた。次にS100A8抗体産生ハイブリドーマを大量培養し、上清より抗体を精製した。免疫沈降法により、in vitroにおいて、精製抗体がS100A8と特異的に結合することを確認した。現在この抗体を担癌マウスに投与することで、マクロファージの腫瘍への集積が阻害されるかどうかを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の目的に記載した、腫瘍随伴マクロファージの集積を阻害するための実験材料が順調に揃ってきたところである。またマクロファージの腫瘍増殖における機能を解明するための各種ノックインマウス、トランスジェニックマウスが平成24年度に完成する予定であり、腫瘍随伴マクロファージの機能およびその分子メカニズムの解明に向けておおむね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に作製したS100A8、S100A9抗体を用いて、腫瘍随伴マクロファージの腫瘍増殖における役割とその分子メカニズムをin vitro、in vivoの実験系を用いて明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
腫瘍随伴マクロファージの機能を明らかにするため、in vitroにおいて走化性、T細胞増殖、活性化誘導能を調べる系を確立する。次に精製したS100A8、S100A9モノクローナル抗体を添加し、走化性の阻害が見られるかを調べる。さらにin vivoにおける腫瘍随伴マクロファージの役割を明らかにするため、癌放射線治療後の腫瘍の再増殖を調べる系を確立し、治療後の腫瘍へのマクロファージの集積をS100A8抗体投与により抑えることで、再増殖の抑制が見られるかを調べる。
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