2012 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍細胞死に伴う、腫瘍随伴マクロファージ集積機構の解明
Project/Area Number |
23701078
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
西躰 元 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (60509941)
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Keywords | 細胞免疫 / マクロファージ |
Research Abstract |
悪性腫瘍は免疫系からの攻撃を免れているが、その免疫抑制状態の維持に、腫瘍に随伴するマクロファージが関与していることが近年報告されている。しかし宿主由来のマクロファージが何故腫瘍に浸潤し、増殖を助ける性質を持つに至るのかは不明である。我々は、マクロファージが死細胞を貪食し、免疫抑制を誘導する性質が腫瘍の増殖に利用されている可能性を考え、腫瘍細胞死誘導後の腫瘍随伴マクロファージの変化を調べた。その結果腫瘍細胞死誘導に伴って、免疫抑制性マクロファージの腫瘍への集積を認めた。集積したマクロファージの遺伝子発現をマイクロアレイにより調べたところ、白血球走化性因子として知られるS100A8、S100A9の高発現を認めた。そこでin vivoにおいてS100A8、S100A9の機能を阻害し、腫瘍へのマクロファージの集積を阻害することを目的として、S100A8、S100A9に対するモノクローナル抗体の作製を行った。培養上清を用いたELISAスクリーニングにより高活性が認められたS100A8抗体産生ハイブリドーマ7クローン、S100A9抗体産生ハイブリドーマ2クローンについて、大量培養、抗体精製および精製後の抗体の各タンパクへの結合活性を検討した。その結果、精製後も活性を保持し、かつ大量精製可能な抗体を産生するハイブリドーマがS100A8、S100A9各2クローン得られた。次に得られた抗体を担癌マウスに投与することで、マクロファージの腫瘍への集積が阻害され、腫瘍の増殖や腫瘍細胞死誘導後の再増殖が抑制されるかどうかを検討した。その結果S100A9抗体投与により、腫瘍細胞死誘導後の再増殖が抑制されることを見出した。以上のことから腫瘍増殖時S100A9によって腫瘍随伴マクロファージが誘引され、集積したマクロファージが腫瘍増殖を助けている可能性が示唆された。
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