2012 Fiscal Year Annual Research Report
アンチセンスRNAによる大腸癌の新規診断法の開発とサイレンシング治療への応用
Project/Area Number |
23701081
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 昭彦 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10446552)
|
Keywords | アンチセンスRNA / 癌 / スクリーニング |
Research Abstract |
大腸癌は年々増加の一途をたどっており、本邦での罹患数は第2位、死亡数は第3位である一方で、早期に発見できれば治癒可能な疾患である。現在行われている大腸癌のスクリーニング検査である便潜血検査は感度が約70%と低く、スクリーニング検査としては十分とは言えないため、新たな大腸癌スクリーニング法の開発は社会的急務である。近年、DNA からメッセンジャーRNA の転写が起きる際約70%の遺伝子においてその相補的なRNA であるアンチセンスRNA が同時に転写されていることが明らかになってきた。更にアンチセンスRNA が一部の癌抑制遺伝子を制御して蛋白質の発現を抑制していることが報告された。このように癌の研究においてアンチセンスRNA が重要性を帯びてきたが、現在までのところヒトの癌に関してアンチセンスRNA の網羅的解析の報告は皆無である。近年臨床応用の観点から、血液中のRNA に関する研究が盛んに行われ末梢血中には臓器に発現している遺伝子の80%以上が存在していることが報告された。これら遺伝子発現の検査を、末梢血で行うことができれば、他の検査法に比べより簡便に疾患の早期発見につなげることができると考えられた。 本研究では大腸癌患者の末梢血中のRNAを抽出して網羅的解析を行い、アンチセンスRNAによる新しい診断法の開発を目的とした。大腸癌患者28例と健常者6例を対象として、アンチセンスRNA の網羅的解析を我々が独自に開発したマイクロアレイを用いて行った結果大腸癌患者の血液中で健常人と変化しているアンチセンスRNAを20種同定した。これらのRNAは大腸癌患者と健常人を明確に区別することが可能であった。またHDHD1という遺伝子のアンチセンスRNAが健常人と癌患者で最も発現に差が認められた。これらのことから末梢血液中のアンチセンスRNAの測定が大腸癌の診断に有用である可能性が示唆された。
|