2011 Fiscal Year Research-status Report
新規のゲノムワイドなDNAメチル化検出法の医療応用:脱メチル化薬の効果予測
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23701087
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
梅津 知宏 東京医科大学, 医学部, 助教 (40385547)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メチル化DNA / DNA脱メチル化薬 / MBD2 / 一分子蛍光分析法 / 骨髄異形成症候群 |
Research Abstract |
本研究課題では、1分子蛍光分析という新たなアプローチでのゲノムワイドなDNAメチル化度決定法(SMMA:single molecule methylation assay)を構築し、実サンプル(ヒト試料)を用いて、SMMAによって疾病発症とメチル化の関係、脱メチル化薬の効果予測が可能かを検証し、医療応用を目指す。2011年度は、研究計画に従い「SMMAを医療応用するための検証」を目的とし、脱メチル化薬を処理した株細胞を材料として、従来のDNAメチル化検出法とSMMAの比較を行った。SMMAで得られた結果は、特定のCpGアイランドなどの特定のゲノム領域についての解析であるバイサルファイトシーケンスよりも、ゲノム全体の網羅的な解析であるDNAメチル化アレイと類似したパターンを示した。以上の研究成果はAnalytical Biochemistry 2011 (415(2):145-150)にpublishされた。次に、研究計画に従い「実サンプル(ヒト試料)を用いたSMMA Index解析」を目的とし、健常人および急性白血病患者、骨髄異形成症候群(MDS)患者の末梢血を採取し、SMMA Indexを測定した。健常人(各年齢層別)における加齢とDNAメチル化度の関係を解析した結果、大きな相関は見られなかった。一方で、健常人(30例)と急性白血病患者(30例)におけるDNAメチル化度の比較では、急性白血病患者において顕著なSMMA Indexの低下が見られた。さらに、脱メチル化薬(VIDAZA)の投与前後におけるMDS患者のDNAメチル化度を解析した。その結果、脱メチル化薬投与後にSMMA indexが著しく低下した。また、脱メチル化薬に感受性の高い患者と低い患者との比較ではSMMA indexの変化のパターンが異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規のゲノムワイドなDNAメチル化度の測定法として、1分子蛍光分析法によるゲノムワイドなDNAメチル化度決定法(SMMA: single molecule methylation assay)を株細胞を用いた実験系で開発した。本研究課題の目的であるSMMA法の医療応用を目指し、初年度は研究計画通り臨床サンプルを用いて解析を進め、その結果、白血病患者とMDS患者においてSMMA indexの変化をモニタリングすることにより病状の変化や脱メチル化薬の効果を予測できる可能性が示された。脱メチル化薬の投与スケジュールなどでサンプル採取に時間を有することもあり、研究計画における患者サンプルの目標数に到達していない部分もあるが、解析を行うための必要サンプル数は確保されており、また現時点でもサンプル採取は継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度におけるSMMA法の医療応用に向けた系の確立を足がかりに、次年度は、SMMAの医療応用として「脱メチル化薬の効果予測」を試みる。5-azacytidine、decitabineは5~7日間投薬、3週間休薬というスケジュールで数クールにわたって治療が行われる。よって、治療前、治療後(投与後5~7日目)、休薬中という3ポイントで繰り返しSMMA Indexを測定する。投薬前後および休薬中における脱メチル化薬に感受性の高い患者と低い患者のSMMA Indexの変化から、薬剤感受性を示すパターンを見いだし、投薬早期に脱メチル化薬の効果予測を行う。また、末梢血由来DNAを用いたSMMA indexの測定に加え、末梢血中のリンパ球分画由来DNAおよび末梢血中の顆粒球分画由来DNAを採取して各細胞分画のSMMA indexの比較を行い、MDS患者におけるSMMA index変化の原因となる末梢血細胞の由来を明らかにする。(どの細胞分画で解析を行えば効果的であるか、臨床応用時におけるサンプル回収の最適化を行う。)本研究課題から得られた結果は、脱メチル化薬の効果予測だけにとどまらず、投薬方法の改善や抗腫瘍効果の作用機序の解明に関する研究へと展開していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度は、研究費の使用状況も概ね計画通りであった。よって、次年度も研究計画通りに研究費の使用を行うことができれば、研究費の過不足は生じないと思われる。次年度の研究費の使用計画では、1分子蛍光分析に用いる蛍光標識MBD2タンパク合成の受託費用と、DNA抽出および制限酵素等の研究試薬に加え、学会発表のための旅費および論文投稿のための英文校正費と投稿料を予定している。
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Research Products
(6 results)