2011 Fiscal Year Research-status Report
マルチオミクス解析を利用したがん幹細胞特異的スプライシングバリアント探索法の開発
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23701092
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Research Institution | Shizuoka Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
畠山 慶一 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (20564157)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Splicing variant / Proteomics / Transcriptmics / Cancer stem cell |
Research Abstract |
本申請は、マルチオミクス解析を利用して、がん幹細胞特異的なバイオマーカーの新規探索技術を開発することを目的としている。平成23年度の研究実施計画は、大きく分けて2つあり、1. がん幹細胞のプロテオーム解析の最適化と2. マルチオミクス解析を利用したがん幹細胞特異的な遺伝子及びタンパク質の探索である。はじめに、プロテオーム解析の最適化を試みた。プロテオーム解析において、LC-MS測定前の前処理がタンパク質の同定数に大きく関わると考えられている。そこでタンパク質の同定効率の向上を目指して、細胞から抽出されたタンパク質の分画条件の検討を行なった。逆相タイプのHPLCと等電点電気泳動分離装置(dPC fractionators)を用いてタンパク質を分離することで、LC-MSによるタンパク質の同定効率を向上できることが示された。これにより、がん幹細胞由来のタンパク質を効率よく同定できる可能性が示唆された。次に、がん細胞特異的な遺伝子及びタンパク質の探索を可能にするマルチオミクス解析手法の開発を行なった。エクソンマイクロアレイとLC-MSから得られたデータを用いて、新規なスプライシングバリアントとそのプロテインアイソフォームの探索が可能なシステムを構築した。この有効性を評価するために、胃がん細胞株MKN45とMKN45Pの細胞間比較を行なったところ、新規スプライシングバリアントとそのプロテインアイソフォームを同定することができた。そこで、この新たに開発したマルチオミクス解析手法を用いて、大腸がん細胞株に含まれるCD133陽性細胞のキャラクタリゼーションも試みた。その結果、CD133陽性細胞に特異的に発現している遺伝子/タンパク質を同定することができた。これらの分子は、大腸がん幹細胞特異的である可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請は、マルチオミクス解析を利用して、がん幹細胞特異的なバイオマーカーの新規探索技術を開発することを目的としている。この技術を開発するためには、1. サンプルの前処理、2.解析手法の確立、3. 解析で得た候補分子のバリデーション、4.候補分子のマーカーとしての評価の4つを行なう必要になる。現状では研究計画通りに、初年度で1及び2を遂行した。この成果の一部は、査読付学術誌に掲載された(Proteomics, 2011, 11, p2275)。また、特許の出願も行なった(特願2011-179788)。さらに、この成果から派生した技術で新たなタンパク質抽出法も開発し、特許出願を行なった(特願2011-117334)。以上のことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階において、研究はおおむね順調に進展している。今後は申請した研究計画に従い、研究を推進していく。平成24年度の研究計画では、がん幹細胞様細胞マーカー候補のバリデーションと、がん幹細胞マーカーとしての有用性の評価を行なう予定である。また、研究初年度に開発した、探索技術を改良した新規アプローチの実証評価を行なっていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現段階において、研究はおおむね順調に進展している。今後は申請した研究計画に従い、研究を推進していくため、次年度の研究費の使用計画には大きな変更はない。使用計画としては、がん幹細胞様細胞マーカー候補のバリデーションとがん幹細胞マーカーとしての有用性の評価のための試薬・備品等の購入を予定している。また、社会・国民に研究成果を発信するために、本研究で得られた成果の学会発表ならびに査読付雑誌への投稿等で生じた支出に研究費の一部を使用する予定である。
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