2011 Fiscal Year Research-status Report
乳癌患者自己抗体を用いた術後補助化学療法選択システムの開発
Project/Area Number |
23701100
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
爲佐 路子 山口大学, 医学部附属病院, 医師 (10570822)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 乳癌 / 自己抗体 / プロテオミクス / 二次元電気泳動 |
Research Abstract |
1.試料の収集および調製:40症例の乳癌の癌組織と非癌部組織から抽出した蛋白と、40人の患者から採取した血清を入手し、組織からNP40蛋白溶解液にて可溶性蛋白を抽出した。2.二次元電気泳動による乳癌特異的スポットの検出:蛋白量200μgを載せたIPGストリップを等電点電気泳動装置にセットして、500 Vで1時間、1,000 Vで1時間、さらに8000 Vで2時間通電する。泳動終了後、平衡化したIPGストリップは、15% SDS-ポリアクリルアミドゲルを用い、15 mA/gelの定常電流で通電した。ゲルはSee Pico CBB Kitを用いて染色した。3.イムノブロットによる血清中自己抗体の検出:二次元電気泳動の後ゲル中に展開されたタンパク質をPVDF膜に転写し、血清(乳癌患者血清あるいは非担癌患者血清)を一次抗体として膜上のタンパク質と結合させ、洗浄後、horse radish peroxidase (HRP)標識抗ヒト2次抗体を反応させて一次抗体に結合させた後に膜を洗浄し、ECL Plusによって検出された陽性スポットを乳癌患者と非担癌患者の血清で比較し、癌患者血清において有意に発現が認められる自己抗体を同定した。4. 自己抗体に対するタンパクの同定:二次元電気泳動を行い、See Pico CBB Kitを用いて染色し、血清と反応した自己抗体と比較し、対応する蛋白スポットを10スポット選定した。5.ゲル内消化:切り出された蛋白スポットゲルからCBB色素を脱色後、脱水した後に10μg/mlの濃度にトリプシン(シーケンス用、Promega V5111)を加えた50 mM重炭酸アンモニウムと5 mM DTTを含む30%アセトニトリル中で30℃のもと再膨潤しながら、ゲル内のタンパク質を消化した。質量分析で同定の段階まで来たが、質量分析装置を調整中であり、同定には至っていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳癌患者の組織、血清は40例程既に入手し、既に二次元電気泳動と患者血清との反応で10スポットを選定した。また、その10スポットに相当するSeePico染色二次元電気泳動ゲル上のスポットを切り抜いて脱色・脱水後にトリプシンでのゲル内消化を行っている。 あとは、質量分析での同定を行なえば、乳癌患者血清中の患者特異的な自己抗体が反応する抗原蛋白を同定することができる。 質量分析装置を調整中であり、まだ同定には至っていないものの、研究目的の達成度としては、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.昨年同様、乳癌患者血清と組織を入手して、サンプル数を倍増させて患者血清中の、さらなる自己抗体スポットを選定する。2.質量分析:現有設備の質量分析装置LC/MSD Trap XCT(Agilent Technologies)の調整ができ次第、peptide sequence tag(PST)分析によって乳癌患者血清において発現が増強した自己抗体に対するタンパク質の同定を行う。3.peptide sequence tag(PST):ゲル内消化した後に、現有設備のLC/MSD Trap XCT(Agilent Technologies)を用いて,PST分析を行う。タンパク質の同定は、ProteinProspector web site (http://prospector.ucsf.edu/)のMS-Fitデータベース検索によって行う。4.血清自己抗体による化学療法要不要群の選別システムの開発:患者血清中に発現する複数の自己抗体の種類と、患者の臨床背景因子(癌の組織型、intrinsic subtype、リンパ節転移の有無、腫瘍マーカーの値、脈管浸潤の有無、再発の有無、予後など)を詳細に照会して、予後に密接に関連する予後因子としての抗体の組み合わせを見出し、化学療法の必要な群と不要な群の選別を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定どおり、成果発表・英語論文校閲・論文投稿費に500,000円程度充て、それ以外は、二次元電気泳動の消耗品であるIPG用ドライストリップ、IPG用試薬、電気泳動用ゲル、電気泳動用試薬と、自己抗体スポット検出のためのイムノブロット用試薬、特異抗体、リコンビナント蛋白の購入にほとんどの研究費を充てる予定である。 前年度の未使用額は、調整中であった質量分析装置での同定のための試薬を購入予定であったことから生じたものであり、調整ができ次第、次年度に購入する予定である。
|
Research Products
(2 results)