2011 Fiscal Year Research-status Report
水圏多細胞生物共生、寄生微生物からの抗腫瘍物質の探索
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23701108
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
和田 俊一 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所沼津支所, 研究員 (40450233)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 水圏微生物 / 代謝産物 / 培養細胞 / 細胞毒性 / 抗腫瘍物質 / がん / ペプチド / トレハロース |
Research Abstract |
まず本研究を始めるにあたって、多種培養細胞パネルを用いたスクリーニングの妥当性を検討するために、微生物化学研究所所有の陸上微生物培養抽出物ライブラリーからの抗腫瘍物質の探索を行った。この結果、分子量444、分子式C17H32O13・2H2Oの新規トレハロース類縁化合物を発見した。本物質は、トレハロース分解酵素による分解を受けにくく、マウスでの抗腫瘍実験を行った結果、S-180細胞による腫瘍などに対して抑制効果を示した。本物質については現在、トレハロースを代替する物質としての有効利用をめざし、様々な形での利用法の検討を行うとともに、特許出願準備中である。 また、本プロジェクトの課題である水圏微生物に関しては、当初の予定どおり、駿河湾などにおいて魚類2種、無脊椎動物17種、および海藻3種の水圏多細胞真核生物を採取し、それらに共生・寄生する細菌および真菌類約800株の単離、培養を行った。それらの抽出物ライブラリーをスクリーニングソースとして、52種類のヒトがん細胞と3-5種類のマウス正常細胞群に対する細胞毒性を調べ、特徴的な毒性パターンを示す代謝産物の探索を行った。有望な活性が認められたサンプルについては、標準化合物との類似性を比較検討し、また活性成分を精製し、MSやNMR分析により同定を試みた。この結果、12種類のサンプルについてはそれぞれ既知物質が同定されたが、それら以外にHR-MS解析の結果導かれた分子式より新規物質と考えられる化合物が9種類確認された。このうち分子量717、分子式C28H47N9O13のペプチド化合物については50mgあまり精製し、現在構造解析と培養細胞に対する活性の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宿主水圏生物の採取、共生・寄生微生物の単離、培養、および多種培養細胞を用いたスクリーニングについて当初の予定通り行ってきた。抗腫瘍活性を示す成分として同定された化合物については既知物質が多かったが、今後の構造解析、活性評価が必要ではあるものの分子式レベルで9種類の新規化合物の存在も確認している。このうち分子量717の化合物については、構造決定や活性評価に必要な量の精製を終え、目下それらについて検討中である。 本研究の過程で見いだされた新規化合物のうち、現在までにマウスでの動物実験による抗腫瘍効果の検討に至った物質は分子量444の化合物のみであったが、これに関しては幾つかの系において有望な抗腫瘍効果が確認された。また派生的な結果ではあるが、本物質は分解酵素による分解を受けにくいトレハロース類縁体であることが示され、抗腫瘍物質としての開発以外に、保湿剤、凍結保護剤、あるいは甘味料としての開発の方向性も考えられたため、現在これら幾つかの視点からの開発も検討中である。 また、これら以外の新規化合物についても順次、精製、構造解析、活性評価、および動物実験を流れ作業的に遂行していくことが可能な体制を整えたため、次年度の研究を円滑に遂行することができるようになった。 以上のような経緯より、本研究に関してはおおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、本研究で得られた分子量717の新規ペプチド化合物について、構造決定、作用機構解析、および動物実験などを順次すすめていく。また予備実験で得られた分子量444のトレハロース類縁体については微生物化学研究所知的財産情報部と外部企業などとの間で開発が進められる段階に入っているが、それら関係各所からの要請に応じて、本研究者が幾つかの追加実験を行う。 本研究において存在が確認された他の9種の新規化合物についても、当初の計画どおり、上2つの化合物と同様、順次構造決定、活性評価、作用機構解析、および動物実験などを行っていく。 また、常により良い抗腫瘍物質の発見、開発をめざし、本年と同様、新たな宿主生物の採取、共生・寄生微生物の単離、培養、およびスクリーニングも継続していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度同様、微生物および培養細胞の培地、培地添加物、培養用のガラス、あるいはプラスチック容器・器具類を購入する。また、本年以上に有望化合物の大量精製が必要となってくるため、精製用カラム、樹脂、溶媒類の購入が必要となる。さらに、化合物の活性評価、作用機構解析において、各種の生化学、細胞生物学、あるいは分子生物学的実験が必要となるため、それらに必要な試薬類の購入にあてる。また、有望化合物については特許出願後に論文や学会での発表を予定しているが、その際の印刷費や旅費などにも充てる。また、より特殊な宿主生物の入手のために、漁業関係者などから協力を仰ぐ可能性も考えられるが、そのための謝金の支払いも多少予定している。
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