2012 Fiscal Year Research-status Report
パラログ遺伝子の合成致死性に基づく新規抗がん剤標的の探索
Project/Area Number |
23701110
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
荻原 秀明 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40568953)
|
Keywords | CBP / BRG1 / 合成致死 / クロマチンリモデリング / 分子標的治療 / ヒストン修飾 / アセチル化酵素 / SWI/SNF |
Research Abstract |
前年度までにCBPおよびBRG1の変異株10数検体においてKATX、CRXをそれぞれ抑制すると生存率が顕著に低下する、即ち合成致死性を示すことを見出した。今年度は、AnnexinV染色やSA-βGal染色によって、合成致死の原因がアポトーシスや細胞老化によるものかを検討した結果、BRG1変異株においては、CRXを抑制すると細胞老化を引き起こし、CBP変異株においては、KATXを抑制するとアポトーシスを誘導することが分かった。 生体内での合成致死性を検討するために、まずBRG1変異株においてドキシサイクリンの添加によるshRNAの発現によってCRXを抑制可能な細胞株を樹立した。この細胞株においてもin vitroで、CRXの抑制により増殖が抑制することが確認された。この細胞株をマウスに移植し、in vivoにおいてBRG1変異がん細胞由来の移植腫瘍がCRXを抑制することで腫瘍増殖抑制効果が得られるかを検討中である。 また、合成致死性を示す新規のがん抑制遺伝子-パラログ遺伝子群の探索を行い、ARID1A等のパラログをもつがん抑制遺伝子を選定し、それらの変異細胞株を収集した。現在、パラログ遺伝子との合成致死性を確認を行っている。 また、肺がんの臨床検体サンプルについて組織免疫染色でBRG1の発現を調べた。その結果、肺がんの10%程度でBRG1の患者でBRG1の発現が抑制されていることが示唆された。また、EGFR変異やALK融合とは相互排他的にBRG1の発現が抑制されているので、EGFR阻害剤やALK阻害剤による分子標的治療の対象とならない患者においては、BRG1の発現が抑制されている患者を特定することでCRX阻害剤による新規治療法の可能性が示唆された。現在、製薬企業と共同研究にてCRX阻害薬を開発中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1.CBPとBRG1それぞれのパラログとの合成致死性の検討における研究目標において、in vitro実験系でのそれぞれの合成致死性を示す遺伝子を同定した。また、アポトーシス、細胞老化による細胞死を引き起こすことによって合成致死となることを明らかにした。また、BRG1変異細胞株における結果が生体内で反映されるかを検討するための細胞株の樹立に成功した。その細胞株を用いて移植腫瘍の増殖抑制作用について検討している。 研究2. 合成致死性を示す新規のがん抑制遺伝子-パラログ遺伝子群の探索において、我々のグループおよびデータベース等からがんにおける失活遺伝子を探索した。それらの遺伝子の中でクロマチン制御関連遺伝子は、我々が解析した肺がんだけで失活しているだけではなく、他の多くのがんでも失していることがわかってきた。そこで、クロマチン制御関連遺伝子の中で、パラログをもつ遺伝子に着目し、それらの変異細胞株を収集した。 交付申請書に記載した計画に基づきおおむね予定通りに研究を推進することができたと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究1.CBPとBRG1それぞれのパラログとの合成致死性の検討における研究目標において、またin vivo実験系で必要となるBRG1変異細胞株の樹立に成功したので、生体内での合成致死遺伝子候補の抑制実験の結果をまとめる。CBP変異株についても生体内での合成致死性を検討する。 研究2. 合成致死性を示す新規のがん抑制遺伝子-パラログ遺伝子群の探索において、がんにおいて高頻度に失活変異がある遺伝子の中で選定したパラログ遺伝子の変異細胞株を用いて、合成致死遺伝子の探索をin vitroの実験系で検討する。標的遺伝子が同定され多場合はin vivo実験系のための細胞株の樹立等の準備に着手する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的には、細胞培養、抗体、siRNA等の消耗品の購入に使用する予定である。
|