2011 Fiscal Year Research-status Report
Nrf2-Keap1を介した癌の新規浸潤調節機序と予防医学的意義の解明
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23701113
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
遠藤 整 東海大学, 医学部, 助教 (10550551)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子環境相互作用 / Nrf2 |
Research Abstract |
細胞は自身の恒常性を保つため、酸化ストレスセンサーシグナルNrf2-Keap1を介して生体防御系遺伝子の発現を誘導し、外部環境からの化学物質や毒物などの曝露によって発生するROSを除去している。また、機能性食品や抗酸化物質に代表される食物由来の天然成分がNrf2の発現を誘導するため、機能性食品の摂取が発癌予防の効果的なアプローチになり得る。一方、癌細胞ではNrf2の恒常的な活性化が認められ、薬剤代謝や解毒に関わる標的遺伝子を誘導するため、Nrf2は癌細胞における生存の安定性獲得に貢献していると考えられる。本研究は、癌細胞の浸潤・転移に重要な役割を担うMMP遺伝子に着目し、Nrf2-Keap1シグナルを介した発現調節機序の解明を目的とする。また、Nrf2-Keap1シグナルの活性化は正常細胞における発癌予防に効果的である一方で、既に癌化した細胞では浸潤能を促進させてしまう可能性を示し、癌の予防と治療におけるNrf2-Keap1シグナルの意義と相違点を明確にする。初年度は、肝癌細胞株(HCC-T, HepG2, HLE)と膵癌細胞株(MiaPaCa2, Panc-1, AsPC-1)を使用し各種検討を行った。各々の細胞株において、MMP遺伝子とNrf2タンパク発現について検討したところ、特にMMP-9とNrf2の発現に強い相関が認められた。一方で、Nrf2抑制因子であるKeap1は全ての細胞株において恒常的に発現しており、MMP遺伝子群との発現に明確な相関は認められなかった。また、Nrf2の発現量が高い細胞株は、Nrf2の標的遺伝子であるHO-1, NQO-1, Trxが恒常的に強発現していた。Nrf2によるMMP-9の転写調節機序が示唆されたため、Nrf2 強制発現およびKeap1 ノックダウンベクターの作成を試み、現在詳細な機能解析を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究目的は、解毒・代謝において中心的な役割を担う肝臓由来細胞に着目し、Nrf2-Keap1とMMP遺伝子の直接的な相互作用を解析することである。肝癌細胞株のみならず、薬物および抗癌剤への高度耐性機構を備えていることで知られる膵癌細胞株を用いて検討出来たことは、計画以上に進行したと考えている。また、Nrf2によるMMP遺伝子の発現調節機序の普遍性を示唆することが出来た。一方で、Nrf2の強制発現ベクターなど実験材料の構築に時間がかかったため、計画以上の進展は出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究結果より、Nrf2によるMMP-9の転写調節機序の存在が明確に示唆されたため、当初の研究計画通り実験を進める。MMP-9遺伝子の発現調節機序を解明するため、Nrf2 発現ベクターを作成し、Nrf2の強制発現によりMMP-9遺伝子の誘導が認められることを確認する。さらに、MMP-9遺伝子のプロモーター領域を含むconstructを作成し、転写活性測定のためluciferase assay を行い、Nrf2による転写調節機序についてより詳細に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に細胞培養に必要な試薬や抗体類などの一般消耗品である。また、必要とする実験器具においても、ピペット、チップ、細胞培養用シャーレなどの消耗品である。
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Research Products
(1 results)