2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710004
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
中野 幸夫 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50364112)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 化学反応 / ラジカル生成 / 界面反応 / 大気化学 / キャビティーリングダウン分光法 / ヨウ素化合物 / 窒素酸化物 |
Research Abstract |
本研究では、人間活動が大気ラジカル濃度へ与える影響や界面反応による新たなラジカルの生成過程に対し知見を得ることを目的とし、人間活動により放出されるNO2やN2O5、NO3などの窒素酸化物とヨウ化物イオンなどの海水中に含まれるハロゲン化物イオンの不均一反応による新規のラジカルの生成過程などを調査する研究を行った。平成23年度においては、まず、時間分解型キャビティーリングダウン分光法を用いて、NO3ラジカルとヨウ化アルキル類のヨウ化エチルとの反応の測定を行った。ここで、ヨウ化アルキル類は海洋のヨウ化物イオンが藻類に取り込まれ光合成により生成され、それらヨウ化アルキル類が海洋中に放出される。NO3ラジカルとヨウ化エチルとの反応により新たな大気ラジカルが生成するため、この反応を測定することにより、人間活動が大気ラジカル濃度へ与える影響の一つを評価できるようになる。本研究では、この反応の測定を行うことで速度定数を決定し、それらの結果を学術誌に報告した。次に、界面反応による新たなラジカルの生成過程に関する研究として、実際の大気中において起こっていると考えられる気体NO2と水溶液中のヨウ化物イオンとの反応の測定を行った。実験は、NO2の気体をヨウ化物イオンを含むNaI水溶液の上部にフローさせることにより、界面におけるNO2とヨウ化物イオンとの反応を引き起こし、その反応により生成されるヨウ素分子の濃度をキャビティーリングダウン分光法を用い測定した。このような測定を水溶液のpHやNaI水溶液の濃度、NO2濃度などの実験条件を変えて測定することで、反応機構に関する知見を得て、可能な反応機構の提案を行った。これらの結果により、人間活動により大気中に放出される窒素酸化物とハロゲンイオンなどが溶け込んだ水溶液との反応が引き起こす界面での大気ラジカル生成過程に対する科学的知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究期間で行う予定の研究内容の6割強程度は現段階で研究が終了していると考えられる。残りの研究内容に関しては、これまでの研究に比較して実験的に難しい測定などは残っているが、現在の進展と合わせて考えると、研究全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の使用予定の研究費のうち数万円を次年度に使用することにしたが、実験における消耗品の消耗頻度による誤差程度のものであり、特段、当初の計画異なるものではないと考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進展に伴い、パルスレーザーの電源用の高電圧電子基盤が必要となったので、それを購入する予定であるが、その他に関しては当初の計画に沿って行う予定である。
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