2011 Fiscal Year Research-status Report
海洋シアノファージによる溶菌に由来する溶存態タンパク質の変遷プロセスの解明
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23710011
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 光宏 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, ポストドクトラル研究員 (60565555)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 海洋 / シアノバクテリア / ファージ |
Research Abstract |
海洋シアノファージ感染による宿主(シアノバクテリアSynechococcus)溶菌に由来する溶存態有機物(DOM)の網羅的プロテオーム解析に向けて、海水試料からファージの分離を試みたが、分離できなかった。現在も引き続き、ファージの分離作業を進めている。海洋DOMプールにおけるシアノバクテリア由来タンパク質の寄与を明らかにするために、海水試料を用いてプロテオーム解析を行った。その結果、海水中には、多種多様な微生物(緑藻・シアノバクテリア・ストラメノパイル・ウイルス・プロテオバクテリアとバクテロイデテスに属する真正細菌)に由来する100種類以上ものタンパク質が、微生物の死後、一部分解を受け、最終的に"溶存態"として残存している様子をとらえることに成功した。このように、海洋の溶存態タンパク質プールへの供給に影響を及ぼす起源生物について、重要な知見を得ることができた。なかでも、シアノバクテリアとウイルスのタンパク質が多く発見された。この結果は、海洋の微生物ループの駆動において、シアノバクテリアによる一次生産を起点とする有機物フラックスが大きく寄与していることを示唆する。さらに、この有機物フラックスを制御する要因として、シアノファージとの相互作用が強く関係しているものと考えられる。環境試料の解析では、両者の寄与を明確化するのは、方法論的に困難であるため、今後、培養株を用いて検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海水試料から分離したシアノファージ株を用いて、宿主の溶菌に由来するDOMのプロテオーム解析を行う予定であったが、現在、実験に使用できるファージ株を十分に確保してはおらず、解析を進めることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
実験に用いるファージ株を確保するため、シアノファージ-シアノバクテリア感染系のモデルとして代表的なファージS-PM2の分譲を依頼し、研究を円滑に進める。また、宿主株を寄託センターから購入する。現在、ファージ株の分譲については、了承を得たところである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度においては、実験に使用できるファージ株を十分に確保できず、プロテオーム解析を進めることができなかった。そのため、これにかかる研究費をそのまま次年度に持ち越し、実験を行う予定である。
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