2012 Fiscal Year Research-status Report
森林土壌における菌核の空間分布特性の把握および土壌炭素蓄積機能の評価
Project/Area Number |
23710014
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
坂上 伸生 茨城大学, 農学部, 助教 (00564709)
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Keywords | 菌核 / 森林土壌 |
Research Abstract |
本研究では,森林土壌における菌核の空間分布特性を把握することにより,菌核形成に関わる環境因子を明らかにするとともに,土壌の炭素蓄積機能における菌核の寄与の評価を目指している。平成24年度は,東北地方におけるアロフェン質/非アロフェン質黒ぼく土地域を中心に土壌調査を実施し,菌核の分布や土壌性状との対比を試みた。菌核の分布については,特に秋田県仙北市のブナ林表層土壌における菌核分布と土壌性状との関係を詳細に調査した。その結果,菌核は比較的リター堆積の少ない無機的な土壌により多く分布しており,菌核含量が高い土壌は腐植複合体アルミニウム含量が相対的に高い傾向にあることが明らかとなった。この成果はGoldschmidt 2012にて発表し,ポドゾル性土壌における鉄・アルミニウム動態に対する微生物作用について発表していたスウェーデンの研究グループなどと意見交換をおこなった。 なお,関連論文の査読時に「菌核量の地点代表性が担保されていない」という意見があり,菌核の寄与を量的に議論するには大きな課題があることが指摘された。事実,36地点で菌核の分布密度を計測した秋田県仙北市のブナ林表層土壌の例では,重量密度で0.01~1.2 mg/g,個数密度で0.87~15個/gという不均一性が示されていた。そこで,本研究の目的である「土壌炭素蓄積機能に対する寄与」や「土壌環境指標としての提案」を実現するために岐阜県御嶽山における菌核量の実験誤差について検討した結果,A層では重量密度2.4±0.6 mg/g(変動係数27%),個数密度7.7±1.3個/g(変動係数17%),B層では重量密度0.96±0.2 mg/g(変動係数24%),個数密度4.8±0.3個/g(変動係数5%)という再現性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な土壌における菌核分布の把握が進んでおり,菌核形成に関わる環境要因の考察が進んでいる。一方,量的な寄与を議論する上では課題が明らかとなったが,誤差を前提とした議論は十分に可能であると考えられた。土壌中での滞留に伴う菌核の物質的変化を明らかとするため,SIMS分析など,明確な結果が出ていない項目もあるが,菌核の分解挙動や炭素蓄積機能に関してデータの取得が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である①菌核形成に関わる環境因子の検討,②土壌炭素蓄積機能に対する寄与の評価,③土壌環境指標としての提案に向けて,引き続きデータの取得と整理をおこなう。また,菌類の炭素貯留への寄与や,微生物による鉄・アルミニウム溶出などの微生物風化に着目する研究が有力学術誌上で散見されるため,菌核形成に関わる菌類による土壌化学性への影響(鉄・アルミニウムの溶出や鉱物への風化作用)を調べることで,環境指標としての提案を着実におこなっていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は最終年度であるため,途上となっている分解試験の完遂や土壌化学性等に関するデータの補完などをおこない,菌核の環境指標としての位置づけを考察し,これまでの研究成果をとりまとめる。そのため,現地調査等は最小限とし,研究費は主に実験器具・消耗品費用や機器分析費用,あるいは成果発表に関わる旅費等に使用する。
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