2012 Fiscal Year Research-status Report
新規大気微量成分分析法を用いた植物より放出される揮発性有機化合物の計測
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23710015
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
中嶋 吉弘 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20419873)
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Keywords | 揮発性有機化合物 / 植物 / 微量成分分析 / 環境影響 |
Research Abstract |
本研究は植物から放出される揮発性有機化合物(BVOCs)について当研究室で開発した新規微量成分分析法であるOH反応性測定法により分析を行い、ガスクロマトグラフ分析法に代表される従来の分析方法では検出されなかった未知の化学物質の存在およびその放出量を定量化する。本研究では日本特に都市域に生息する樹種を対象として、樹木から放出される有機化合物の測定を行いさまざまな環境条件に置かれた樹木が放出するVOCsの放出量や組成を明らかにする。 昨年度は植物が自然な条件で実験を行なうための植物育成用温室の製作、植物以外の化学物質の混入を防ぐための植物用エンクロージャーの製作を行なった。今年度は引き続きテスト実験として、北米大陸に自生する植物(カナダトウヒ)を対象としてOH反応性測定およびガスクロマトグラフ分析、陽子移動反応型質量分析法によるBVOCsの総合測定を行った。また前回の実験の反省から、光源を熱発生がより低いHIDランプに変更した上で、植物周辺の光量・温度に対するBVOCsの放出量および未知物質の依存性についての測定を行なった。 その結果、HIDランプを用いた実験では光量・温度変化に関わらず、テスト植物では1種類のBVOC(イソプレン)が放出量の90%以上を占めることがわかり、残りの特に大気化学反応に重要と考えられるBVOCs(モノテルペン・セスキテルペン(以降MTs・SQTs)など)の精密測定に支障をきたすことがわかった。また今回測定対象とした植物に関しては、当初予定していた未知物質の放出は優位に確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究成果を元に、テスト植物の自然な環境条件化での測定を行なった。昨年度の実験で障害となった揮発性有機化合物(BVOCs)の採取方法および、植物育成に必要な擬似太陽光の選定等については特に実験の障害とはならなかった。一方でテスト植物では1種類のBVOC(イソプレン)が放出量の90%以上を占めることがわかり、残りの特に大気化学反応に重要と考えられるBVOCs(モノテルペン・セスキテルペン(以降MTs・SQTs)など)の精密測定に支障をきたすことがわかった。また今回測定対象とした植物に関しては、当初予定していた未知物質の放出は優位に確認されなかった。 この結果を受けて次年度は測定植物を変更し、MTs・SQTsなどを主に放出する植物の測定に変更する。具体的にはMTs・SQTsの放出量が大きいと考えられている針葉植物(スギ・マツなど)を対象とした測定を推進する。 今年度後期は代表者が所属する研究機関を変更したため、後期以降の円滑な研究推進が困難であった。この問題点は既に解消されていることから、次年度以降の研究には特に影響ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は測定対象をスギ・マツなどの針葉植物を対象として光量・温度に対する揮発性有機化合物(特に光化学反応やエアロゾル生成に重要な役割を演じていると考えられるモノテルペン・セスキテルペンなどを中心に)の放出量依存性および未知物質の存在の有無について研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究費については予算内で執行した。次年度については上記の研究内容を元に予算執行を行なう。また次年度は最終年度であることから、研究成果の発表のための予算執行(学会参加の旅費・論文作成費など)を行なう。
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Research Products
(7 results)