2012 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアにおける金製錬所から多量に発生する水銀の大気拡散と住民の暴露
Project/Area Number |
23710016
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
芹川 裕加 富山県立大学, 工学部, 研究員 (50598977)
|
Keywords | 水銀 / シミュレーション / インドネシア / 金精錬 |
Research Abstract |
インドネシアでは金の採取と精錬に伴い、大量の水銀が使用されている。中央スラウェシ州パル市の小規模な金精錬現場では年間約180トンもの水銀が水系や土壌、大気等の環境中へ排出されていると見積もられている。金精錬所周辺住民が大気中の水銀によって健康に影響を及ばしかねない状況であるにもかかわらず、これまでに大気中水銀の現状は把握されてこなかった。そこで、金精錬所周辺の大気中水銀濃度の測定を行い、水銀の空間分布と経時変化の把握を行った。さらに流体解析ソフトウエアPhoenicsを使用し水銀の拡散シミュレーションを実施し、金精錬所から大気中への水銀放出量の推定と精錬所の増加に伴う水銀濃度の将来予測も実施した。パル市の風向は日中と夜間で変わり、それぞれの風下に当たる地点で水銀濃度が高くなっていた。また、金精錬所の方角から風が吹く時間帯にはWHOのガイドライン(1,000 ng m-3)を超える高い水銀濃度を観測した。一方、風向が逆の時間帯は平均4.6ng m-3と低い値であった。なお、非汚染地域の大気中水銀濃度は1~3ng m-3と報告されている。この水銀の実測値と気象データを使用し大気拡散シミュレーションを行ったところ現地の大気中の水銀濃度に関して実測値とほぼ同様な空間分布を再現することができ、時間変化も再現することができた。このことから、年間約53トンもの水銀が大気中へ放出されていると推算され、環境中に排出される水銀の約30%が大気へ放出されていると推定された。このパル市における大気への水銀放出量は中央カリマンタン州タカラシ村と比べかなり多い。また、今後さらに金精錬活動が活発化し水銀放出量が1.35kg/hr増えた場合、金精錬所から約5km地点では風向や風速により変化はするが500 ng m-3以上の水銀が大気中に増加すると予想された。
|
Research Products
(2 results)