2011 Fiscal Year Research-status Report
鉄の環境動態を解き明かすセリウム安定同位体分析手法の確立
Project/Area Number |
23710017
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
田副 博文 弘前大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60447381)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | セリウム / ネオジム / 安定同位体分別 / 放射壊変起源同位体 / 北太平洋亜寒帯 / 供給源 / 陸源物質 |
Research Abstract |
セリウム安定同位体比測定法開発のため、ダブルスパイク法を用いた表面電離型質量分析およびSm内標準添加法を用いたマルチコレクター型質量分析計による分析を検討した。ダブルスパイク法では回収率によらず添加した同位体スパイクの比を用いて分離操作中の同位体分別を補正することができる。しかし、同位体比スパイクの添加はスパイク自体の同位体比および混合による重量測定の誤差の伝搬により、目的とする安定同位体比の測定精度を低下させる。同位体比測定に必要な試料量としては100ng程度であり、外洋海水に換算して200L程度であるため、現在保有する大量採水器および海水処理システムで対応することが可能であることが確認された。一方で、サマリウム内標準法では質量分析の際のセリウムとサマリウムの同位体分別係数が同一であるとみなし、補正を行う。しかし、化学分離ではセリウムが定量的に回収される必要がある。Tazoe et al. (2007)で開発した海水中のセリウム濃縮法ではマンガン酸化物への吸着率が約90%であるため、本研究では吸着法および化学分離方法の再検討を試みた。しかし、大量かつ高マトリックスの海水試料から定量的にセリウムを回収することが困難であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請当初に予定していたダブルスパイク法に加え、内標準添加による分析法によってより高精度の安定同位体比が得られることが期待された。そのため、セリウム試薬や天然の海水試料の分析を行う前段階として分析法の再検討を行った。しかし、高マトリックスの海水試料に対して定量的な回収が要求される内標準補正は困難であることが分かった。これらの検討により平成23年度に計画をしていたイオン交換や粒子吸着反応などの素過程で生じる同位体比分別の分析に関しては平成25年度へ異動することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には学術研究船白鳳丸による北太平洋亜寒帯域の横断航海(東京―ダッチハーバー―バンクーバー)が予定されており、申請者もこれに乗船し試料採取を行う。平成23年度の研究結果より試料の分析にはダブルスパイク法を用い、船上においてスパイクの添加と海水試料の濃縮作業を行う。陸上研究室へ持ち帰った試料は化学分離を行い、東京大学大気海洋研究所の表面電離型質量分析計を用いて分析を行う。また、これと併せて市販試薬の安定同位体分析も行う。海洋への供給源の情報として大気ダストや河川と海水の比較を行う必要がある。そのため平成25年度に大気ダストの標準試料の溶解実験を行う。また、東京近郊の河川(多摩川・荒川)のサンプリングを行い、河川水および汽水域での同位体比の変動を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ダブルスパイク法に用いる同位体スパイクをセリウムおよびネオジムに関してそれぞれ2種類 10mgずつ購入する。研究航海では大量の海水を船上分析するため器具・試薬が必要となる。また、放射壊変起源同位体と安定同位体の分析は相互に汚染する危険性が高いため、別個に器具類を買い揃える必要がある。これらの研究航海で得られた試料約100試料の同位体分析ではレアメタルとして価格の高騰しているレニウムを使用するフィラメントを用いるためこの購入に予算の多くを充当することを計画している。
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