2012 Fiscal Year Research-status Report
鉄の環境動態を解き明かすセリウム安定同位体分析手法の確立
Project/Area Number |
23710017
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
田副 博文 弘前大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60447381)
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Keywords | レアアース / セリウム / 鉄 / 環境動態 / 安定同位体 / トレーサー |
Research Abstract |
平成24年度8月から10月に実施された研究船白鳳丸によるKH12-4次航海に乗船し、海水試料の採取を行った。対象海域は日本列島東方海域および北緯47度上の北太平洋亜寒帯域であった。亜寒帯域では大気経由での鉄やセリウムの供給に加え、キリルカムチャツカ島弧の風化物の寄与や生物生産による環境変動の影響を検証することが可能で重要なフィールドであった。こうした要因によりセリウムは起源物質を反映する放射壊変起源同位体、粒子除去を反映する安定同位体比ともに大きな変動を引き起こす可能性が予想された。しかしながら観測海域での悪天候の長期化のために従来、対象海域として予定していた熱水域および亜熱帯海域での観測を行なうことが適わなかった。観測実施を行った亜寒帯域では、大量採水器を用い、0m, 250m, 1000m, 2000m での各層1000L採水を行い、このうち250Lをセリウム安定同位体分析試料、750Lを放射壊変起源同位体分析試料として用いた。安定同位体比分析試料は塩酸を用いて酸性化し担体となる鉄を加えた後、アンモニア水により中和し水酸化鉄共法により試料を濃縮し陸上へと持ち帰った。この試料は塩酸に溶解後、イオン交換法用いて化学分離した。同位体比分析については現在継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度に実施予定であった河川水の調査を実施予定であったが、同位体比分析法の見直しを行ったため、来年度に繰り越している。また、24年度に海洋観測を行った海水試料の分析に関しては弘前大学にて化学分離操作を行ったが、同位体比分析については東京大学大気海洋研究所の表面電離型質量分析装置を利用するため平成25年度に持ち越している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に採取した亜寒帯域のセリウム安定同位体比は高い粒子生産性のため、大きな同位体比分別を伴うことが予想されている。この分析結果をもとに海水中での除去過程の検討を行うが、対象海域とした亜熱帯域の観測が海況不調により実施できなかったことから室内実験による同位体比分別係数との比較や追加での海洋調査を実施することを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで分析法の開発および海洋観測における試料の採取を重点的におこなってきており、今後はそれらの試料の分析に必要な機材の調達が必要となる。特に質量分析には高価な貴金属であるレニウムを使用したフィラメントが必要となるため予算の多くを占めることになる。また、分析結果の状況に応じて追加の海洋観測が必要となる可能性も考えられ、状況に応じた対応を取ることとなる。
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Research Products
(1 results)