2011 Fiscal Year Research-status Report
湿原における脱窒および亜酸化窒素生成に電子供与体が与える影響
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23710018
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
千賀 有希子 東邦大学, 理学部, 講師 (30434210)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脱窒 / 溶存有機物(DOC) / N2O / 湿原 |
Research Abstract |
湿原において人為由来の硝酸(NO3-)の負荷量が増加しており富栄養化や酸性化が深刻化しつつある.脱窒は湿原のNO3-消失を担う重要な過程であるのに加えて温暖化ガスである亜酸化窒素(N2O)を生成するため,その把握が喫緊の課題となっている.これまで湿原の脱窒およびN2O生成に関して多くの報告があるが,未だにそれらの正確な見積もりには至っていない.その原因の1つとして脱窒の電子供与体である溶存有機物(DOC)の質とその量が考慮されていないことが挙げられる.そこで本研究では,湿地における脱窒およびN2O生成にDOCの質とその量が与える影響を解明することを目的とする. 今年度は,申請者が立正大学から東邦大学へ移動したため,まず実験機器等の設備を新たに整えた.DOC量を測定する全有機炭素(TOC)計(平沼全有機炭素測定装置TOC-2300, 平沼産業株式会社)は購入し,調製した.DOCの質は東邦大学に設備されている分光蛍光光度計で解析することが出来た.NO3-,NH4+,N2Oなどの安定同位体比を測定する質量分析計(IRMS)とガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)については現在調整中である. 2011年8月と10月の釧路湿原土壌約0,20,50,100,150,200cmの間隙水中のDOC濃度は,土壌深度とともに増加した.分光蛍光光度計を用いたDOCの解析結果は,湿原土壌0cmの間隙水とそれ以深の間隙水で大きく異なっていた.これまでに申請者らは,土壌深層部で脱窒が抑制されている(Senga et al. 2011)ことを見出している.従って,これらの結果はDOCの質およびその量の違いが脱窒を左右している可能性があることを示唆している.DOCのどのような成分が脱窒およびN2O生成を支配するのか明らかにするために,引き続き湿原土壌中のDOCの質とその量を解析していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学を移動したため、設備を新たに整えなければならず、やや遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
質量分析計(IRMS)とガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)など,研究が出来る体制を整える.特に,15Nトレーサー法(15NO3-を添加しインキュベーション後,生成したNH4+,N2,,N2Oの安定同位体比を質量分析計(IRMS)とガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)で測定)を用いて,脱窒およびN2O生成とDOC構成物質との関係が解明できるようにする. 釧路湿原での定期観測を引き続き行い,有機物含有量,DOCの質とその量,脱窒活性,N2O生成活性など基礎データを集める.定期観測の結果から脱窒およびN2O生成の時間的・空間的変動を明らかにし,その支配因子との関係を解析する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた状況:大学を移動したため,当初の研究計画と異なる状況となった.物品費:300,000円(薬品類,サンプル瓶類等)旅費:400,000円(釧路湿原へ調査およびサンプルの回収4回,研究成果発表のための交通費および宿泊費)人件費:0円その他:50,000円(英語論文校閲代)
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Research Products
(3 results)