2012 Fiscal Year Research-status Report
湿原における脱窒および亜酸化窒素生成に電子供与体が与える影響
Project/Area Number |
23710018
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
千賀 有希子 東邦大学, 理学部, 講師 (30434210)
|
Keywords | 脱窒 / 亜酸化窒素(N2O) / 溶存有機物(DOC) / 湿原 |
Research Abstract |
湿原において人為由来の硝酸(NO3-)の負荷量が増加しており富栄養化や酸性化が深刻化しつつある.脱窒は湿原のNO3-消失を担う重要な過程であるのに加えて温暖化ガスである亜酸化窒素(N2O)を生成するため,その把握が喫緊の課題となっている.これまで湿原の脱窒およびN2O生成に関して多くの報告があるが,未だにそれらの正確な見積もりには至っていない.その原因の1つとして脱窒の電子供与体である溶存有機物(DOC)の質とその量が考慮されていないことが挙げられる.そこで本研究では,湿地における脱窒およびN2O生成にDOCの質とその量が与える影響を解明することを目的とする. 申請者は,昨年度より立正大学から東邦大学へ移動したため,まず実験機器等の設備を新たに整える必要があった.昨年度はDOC量を測定する全有機炭素(TOC)計を調製した.今年度はDOCの質を,分光蛍光光度計による三次元励起蛍光スペクトル法で得たデータをPARAFAC解析することにより同定する方法の開発に努めた.PARAFAC解析とは主成分分析に似た多元分解分析法のひとつであり,この解析により多数あるピークを統計学的に分け同定することができる方法である.PARAFAC解析にはある程度まとまった数のサンプルが必要であるため,現在空間的および時間的に異なった湿原の水サンプルを集め,解析について検討を行っている.DOCのどのような成分が脱窒およびN2O生成を支配するのか明らかにするために,引き続き湿原土壌中のDOCの質とその量を解析していく予定である. 窒素安定同位体比を測定する質量分析計(GC-MS)などその他の機器についても現在調整中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度大学を移動し、また移動先の研究室の引っ越しを強いられるなど、設備がなかなか整わず、遅れが生じている。しかし、検討の余地はあるものの、設備は急速に整いつつあるので、今年度は十分に研究が進められると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究体制を整える。 引き続き釧路湿原での定期観測を行い、基礎データを集める。定期観測の結果から脱窒およびN2O生成の時間的・空間的変動を明らかにし、その支配因子との関係を検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①発生した状況:研究設備の調製が遅れ、当初の研究計画と異なる状況となった。 ②物品費:565,418円(試薬類、恒温槽、採水器、センサーなど) 旅費:200,000円(釧路湿原および学会の交通費および宿泊費) 人件費・謝金:0円 その他:100,000円(英語論文校閲代)
|