2013 Fiscal Year Annual Research Report
湿原における脱窒および亜酸化窒素生成に電子供与体が与える影響
Project/Area Number |
23710018
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
千賀 有希子 東邦大学, 理学部, 講師 (30434210)
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Keywords | 脱窒 / 溶存有機物(DOC) |
Research Abstract |
脱窒とは,嫌気条件下で硝酸を窒素ガスへ還元する微生物過程である.この過程は,生態系の窒素を無毒化し大気中へ放出するため,浄化という点で重要な過程だと考えられている.そのため富栄養化の影響を受けやすい水域で脱窒の把握が急がれている.しかしながら,これまで脱窒を支配する水温,pH,溶存酸素濃度,NO3-濃度といった環境因子が研究されてきたが,溶存有機物(DOC)との関係については不明な点が多い.脱窒細菌は従属栄養細菌であり,DOCを利用する.これまでに有機物の量と質を同時に考慮した研究例は少なく,有機物の分子量が大きいほど脱窒細菌が利用できないなどの報告があるが定かではない.本研究では,脱窒とDOCとの関係を明らかにするために,有機物の添加培養実験を行い,有機物の量と質が脱窒に与える影響を考察した. 脱窒活性はアセチレン(C2H2)阻害法に準じて測定した.脱窒と有機物の量の検討は,グルコース(Glu)を用い,脱窒活性への添加実験を行った.有機物の質の検討は,Glu,フェノール(Phe),チロシン(Tyr),キニーネ(Qui),フタル酸 (Pht)を用いた. 有機物の量の検討では,脱窒活性はGluの低濃度範囲では濃度に伴って増加したが,高濃度範囲では比例的に増加しなかった.これは過剰なGluに対して脱窒細菌が阻害を生じたためと考えられた.有機物の質の検討では,両炭素量ともGlu,Tyr,Pht添加の脱窒活性は有機物添加がないものに比べて増加するか同程度だった.一方,Phe,Qui添加の脱窒活性は減少した.Glu,Tyr,PhtはPheやQuiと比べて単結合が多いため,脱窒細菌に分解されやすいと考えられた.本研究を通して,有機物の分子間の結合エンタルピーの違いが脱窒を支配すると推察された.この結果は,有機物の質として分子量よりもむしろ構造の違いが脱窒に影響することを示している.
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Research Products
(2 results)