2012 Fiscal Year Research-status Report
熱帯季節林の土壌炭素蓄積プロセスとゴム林転換による影響の評価
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23710028
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
鳥山 淳平 独立行政法人森林総合研究所, 温暖化対応推進拠点, 研究員 (00582743)
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Keywords | カンボジア / 熱帯季節林 / 土壌炭素 / ゴム林 |
Research Abstract |
<1. 玄武岩土壌の炭素蓄積メカニズム> 前年度の分析結果から、カンボジアでは玄武岩土壌が堆積岩土壌に比べ、より高い炭素蓄積量を示すことが明らかとなった。本年度は玄武岩土壌の高い炭素蓄積量の要因を明らかにするため、比重分画を行った。その結果、表層土壌の炭素のおよそ9割が鉱物粒子の表面に吸着していることを確認した。次に遊離酸化Al分析を行い、堆積岩土壌に比べ、玄武岩土壌により多く含まれる遊離酸化Alが炭素吸着の安定化に貢献していることを明らかにした。また同じ玄武岩土壌でも玄武岩の風化程度によって、赤みの度合いや理化学特性が異なることを明らかにした。 <2. 常緑・落葉性の異なる森林の堆積有機物と土壌の炭素蓄積機能> 熱帯季節林の代表的な森林区分である着葉フェノロジー(常緑・落葉性)が土壌炭素蓄積に与える影響を明らかにするため、同域のリターと土壌有機物の量、質を広域比較した。リターのC/N比は落葉>常緑林の傾向がみられた。0-5cm土壌のC/N比は落葉林1地点を除き落葉>常緑林であり、深さの増大に伴い常緑・落葉間差は不明瞭になった。リター現存量は常緑>落葉の傾向がみられ、リター由来の炭素、窒素蓄積量はともに常緑>落葉林であった。比重分画において、土壌炭素に対し最も寄与の大きいfine HF(0.063mm以下の重画分)は酸性シュウ酸塩可溶Al(Alo)、ピロリン酸可溶Al(Alp)と正の相関がみられた。高Alo領域では、fine HF由来の炭素含量は常緑林が落葉林を上回り、森林由来の炭素供給量の違いに起因すると考えられた。Alpの増加に伴うfine HF由来の炭素の増加は常緑、落葉で同程度であった。炭素安定同位体比は、L層から深さ15cm土壌、また軽画分から重画分の変化について、明瞭な常緑・落葉間差はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本国内に保管している土壌サンプルを用い、研究を進めた。土壌のCN分析、アルミの定量、比重分画試験、安定同位体比分析を行い、天然林の土壌炭素の蓄積形態を明らかにすることができた。本年度内には掲載が間に合わなかったが、現在2本の原著論文の掲載が決まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き土壌実験を行う。また土壌炭素の化学的特性を明らかにするために、新たに赤外分光法に取り組む。本年度の実験結果を論文にまとめて投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
論文執筆作業に若干の遅れが生じ、英文校閲費用の繰越を行った。その為に次年度、英文校閲を利用する。また追加試験の実験試薬を消耗品として購入する。
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Research Products
(2 results)