2011 Fiscal Year Research-status Report
環境動態解析のためのハロゲン化ナフタレン分析法の高度化
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23710030
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
羽成 修康 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (10392648)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有害化学物質 / 塩素化ナフタレン / 臭素化ナフタレン / 二次元ガスクロマトグラフ質量分析計 |
Research Abstract |
当該年度の研究内容は、一から八塩素化体の同族体を有する塩素化ナフタレン(PCN)の全75異性体について、二次元ガスクロマトグラフ質量分析計(GCxGC/MS)を用いた詳細な分離分析を実施することであった。当該装置は一次・二次元目に異なる極性の分離カラムを組み合わせることで高精度な分離が可能になるため、無・微・中・高極性カラムや液晶カラムから様々な組み合わせを検討した。また分析試料は、塩素含有率の異なる4種類の製剤を混合、一から八塩素化体まで含有する試料とし、それを用いた。結果として、一次元目に光学異性体分割カラム(中極性)、二次元目に高極性カラムを適用することで、より多くの異性体分離が実現できた。具体的には、全75異性体の同定は所有試薬の不足により困難であったが、そのうち66つの成分の分離を確認した。既報と比較すると、二塩素化体では分離に成功した成分数が5つから8つへ、三塩素化体では8つから10つへ、四塩素化体では14つから20つへ増加し、異性体別の詳細評価が可能となった。特に、分離が困難であった、ダイオキシン類似の毒性値を持つ五塩素化体の異性体#52/60、六塩素化体の異性体#64/68、#66/67及び#71/72の分離に成功した。次に、本手法をPCN製剤に適用したところ、これまで分離困難で混合物として取り扱われた異性体#52/60に関して、同一製剤でも製造元の違いに伴い、存在割合が異なっていることが明らかとなった。この成果は、GCxGC/MSによる個々の異性体を用いたリスク評価の高度化が図れただけでなく、その存在割合に注目した成分組成パターンの識別から供給源推定の高度化にも繋がった。また本手法は、既報では必要な液体クロマトグラフ等を用いた前処理をせずに高精度な分離分析が可能であるため、分析時間の短縮や省溶媒化も実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
5つの塩素化体では完全な異性体分離・同定を実現したが、残りの二・三・四塩素化体に関しては異性体同定が完全ではなく、次年度当初に、確立した分析条件のPBNへの拡張が行えないため。また、PBN異性体に関しては、購入可能な市販試薬の一部を準備したが、明らかに種類が少なく、本格的な光合成実験が必須であるが、当該年度の事前検討では光源の光量不足により合成実験の再検討が必要になったため、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
PCN全異性体の完全分離に関しては、一条件での一斉分析にこだわらず、低及び高塩素体(例えば、一から四塩素化体、五から八塩素化体)等に分割し、よりよい分離カラムの組み合わせを模索し、目標の実現を目指す。また光合成実験に関しては、高スペックな器具を準備することで既報と同様な条件を用いてPBN合成を行い、異性体種を拡充、GCxGC/MSへの適用を目指す。次年度使用額が生じた理由は光合成実験がやや遅れたことに起因している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、やや遅れているPCNの完全分離及びPBN光合成実験に関して検討を継続する。目標達成後は、精密質量スペクトル解析ソフトを用いて、PCN及びPBN一斉分析で妨害物質になることが予測される、精密質量数が近接している安定同位体標識体(ラベル体)四塩素化のPCNと二臭素化のPBNの分離状況の確認を行い、また、合成したPBN標品の同定を同位体組成から試みる。さらに、可能な限り得られた成果を外部発表する予定である。
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