2012 Fiscal Year Research-status Report
環境動態解析のためのハロゲン化ナフタレン分析法の高度化
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23710030
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
羽成 修康 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (10392648)
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Keywords | 有害化学物質 / 塩素化ナフタレン / 臭素化ナフタレン / 二次元ガスクロマトグラフ質量分析計 |
Research Abstract |
当該年度の研究内容は、塩素化ナフタレン(PCN)について、昨年度実施困難であった二~四塩素化体の異性体に関して二次元ガスクロマトグラフ質量分析計(GCxGC/MS)を用いて得られた詳細な分離分析結果を解析し、異性体分離・定性情報を確定すること、及びPCN分析条件を臭素化ナフタレン(PBN)へ拡張することであった。二塩素化体及び四塩素化体に関しては、昨年度決定した一次元目に光学異性体分割カラム(中極性)、二次元目に高極性カラムを組み合わせた分析条件を若干変更することで、詳細分離を実現し、また当該異性体の定性も可能となった。この結果により、三塩素化体を除く異性体に関しては、これまで分離が困難であったダイオキシン類似の毒性値を持つ五塩素化体の異性体#52/60、六塩素化体の異性体#64/68、#66/67及び#71/72の分離に成功したことだけでなく、発生源特定のための指標として用いられる、市販製剤の主成分をなしている二塩素化体の異性体#5/6及び#7/11/12、四塩素化体の異性体#33/34/37及び#43/45の異性体組成を明確にできたため、リスク評価の高精度化、及びこれまでの発生源特定に関する報告結果の精査や発生源特定の高度化にも繋がった。我々の知る限り、二塩素化体及び四塩素化体の異性体の完全分離を報告した例はないため、非常に有用な研究成果であり、新たな知見を得るための要素技術になると考えられる。また本手法では、精密質量数が近接している安定同位体標識体(いわゆるラベル体)四塩素化PCNと二臭素化PBNの溶出位置が大きく異なり、相互に妨害物質にならなかったことを確認できたため、GCxGC/MSはより高精度なPCN/PBN一斉分析が可能な手法の一つであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一~八塩素化体のうち、7つの塩素化体では完全な異性体分離・定性を実現したが、残りの三塩素化体に関しては異性体分離・定性が十分でなく、次年度当初に、確立した分析条件の実試料への拡張が行えないため。またPBN異性体に関しては、購入可能な市販試薬を準備したが、未だに種類が少なく、本格的な光合成実験が必須であるが、当該年度の検討では合成が困難で、光合成実験の再検討が必要になったため、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
PCN全異性体の完全分離に関しては、三塩素化体のみ定性が遅れているが、異性体AやBとした上で分離したピークの暫定的な定性を順次行い、併行して実試料分析を進めながら、目標の早期実現を目指す。また光合成実験に関しては、既報やテキスト等から適切な条件を再検討した上でPBN合成を行い、異性体種を拡充、GCxGC/MSへの適用範囲拡大を目指す。次年度使用額が生じた理由はsubmissionした論文の査読に時間を要し、英文校閲代及び別刷代を使用できなかったことに起因している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、PCNの完全分離及びPBN光合成実験に関しての検討を前年度と同様に継続し、併せて実試料への本手法の適用を模索する。実試料は、市販製剤や環境試料等を選択し、これらに残留するPCN及びPBNの異性体組成を明確にする。分析結果取得後、統計解析ソフトを用いて、PCN及びPBNの異性体組成の分析結果をPCA分析及びクラスター分析で解析し、PCN及びPBNの環境動態の把握を行い、新たな知見獲得を目指す。また、可能な限り得られた研究成果を外部発表する予定である。
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Research Products
(2 results)