2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒマラヤ氷河融解によるガンジス河生態系への影響評価研究
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23710032
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
谷保 佐知 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 研究員 (00443200)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ヒマラヤ / ガンジス / POPs / PFOS / PFOA / 化学トレーサー / 環境分析 |
Research Abstract |
Central University of BiharのSinha博士、Manipal Universuty大学Balkrishna博士、インド海洋研究所(NIO)のBorole博士らとの研究協力体制を確立し、現地研究者の協力の下、ヒマラヤ山脈からベンガル湾まで、全長250 kmに及ぶガンジス河流域の包括的環境試料を収集した。また2012年1月に協力研究者を現地へ派遣し、残留性汚染物質(POPs)や医薬品汚染なども含めた包括的な化学分析のためにon-site試料抽出を行った。 特に、ガンジス河流域において、魚類・河川水・湖水・雨水・底質等を採集し、新たな地球化学トレーサーであるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)関連物質とPOPs類等、水資源の地球環境動態解析に必要な環境分析化学・地球化学指標をJISK0450-70-10およびISO25101等に準じて高度に精度管理がとれた機器分析科学技術を用いて測定した。検出感度は数pg/Lであり、インドのようなベースライン汚染を調査する上で十分な高感度分析技術を開発した。 2008年の予備的調査で有用性が明らかになったPFOS関連物質等の分析より、ガンジス川における化学汚染がヤムナ川から始まっていることを明らかにできた。この結果を定量的に明らかにするために、Central University of BiharのSinha博士を招へいし、ガンジス川水資源の季節的変動について基礎データを収集した。これらのデータを元にガンジス河の水・堆積底質中の化学物質がどのように希釈・濃縮・輸送されているのかを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インド国内有力研究機関との協力体制を確立し、予定していた現地調査を達成した。採集した試料分析も半数以上終了し、24年度にインドで開催される国際研究集会での発表を予定している。インド側カウンターパートの複数の研究者を日本に招へいし、ワークショップを開催し今後の研究方針について合意した。特に医薬品汚染については当初予定していなかったが、期待以上の研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
チベット・中国および中東より大気中へ放出された化学物質が降雨・氷雪によりヒマラヤ高山へ負荷され、一部は氷河を形成するとともに融雪水・地下水・伏流水としてガンジス河へ流入、最終的にベンガル湾へと注ぐ全長250 kmに及ぶガンジス川陸水モデルを作成する。ガンジス河流域より採集した多様な生物・環境試料について化学分析データを蓄積することで、人工化学物質の給源推定、河川水・雨水・底質間の物質分配・循環の予測、生物濃縮現象とその危険性を評価し、国際研究集会での研究成果の公表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費、旅費、運搬費等に使用する。消耗品は全て機器分析・化学分析に必要な試薬・ガス類と論文別刷り代である。旅費についてはインド現地調査を予定し、その他(運搬費)として現地調査に伴う試料や機材の運搬に使用する。
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