2011 Fiscal Year Research-status Report
大気化学輸送モデルを用いたトップダウン手法による一酸化二窒素の全球収支の解析
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23710034
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
石島 健太郎 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (90399494)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | N2O / 逆計算 / TransCom-N2O |
Research Abstract |
本年度はまず昨年立ち上げられたTransCom-N2O(国際大気輸送モデル計算相互比較プロジェクト)の枠組みに従ってN2O逆解析を行った。使用モデルはCCSR/NIES/FRCGC AGCMであり、気象庁JRA-25再解析気象データによりナッヂングされている。成層圏におけるオゾン濃度はECMFW-INTERIMの再解析値を使用し、その光分解、およびN2Oの光分解とO(1D)との酸化反応がモデル中で考慮されている。逆解析に用いる観測データは、TransCom-N2O のProtocolに従い、NOAA/ESRL/GMDによる全球フラスコサンプリングネットワークのデータを中心に、環境研やAGAGE等のin-situ観測値も含めた約60ステーションの2005-2009年のデータを用いた。初期推定値(priorフラックス)は、EDGARv4.1の人為起源放出量推定値と、フランスの研究グループによるORCHIDEE O-CN陸上生態系モデル及びPISCES海洋モデルの推定値、そしてGFED2のbiomass burningによる放出量推定を組み合わせたものであり、全球年間放出量は17 TgN程度である。推定領域はTransCom3(CO2)で用いられた22領域(陸・海11領域)に準拠している。逆解析は、濃度測定誤差、測定値の時間代表性やモデル輸送等の誤差を考慮し、Rayner et al. (1999)に準拠した逆解法アルゴリズムを用いて行った。東南アジア、ヨーロッパ、北太平洋で逆解析推定値(posterior)がpriorよりも増加し、南緯45度以南の海洋で減少したが、他の地域には大きな変化はなかった。しかし地域毎のフラックスの季節変動は逆解析によって振幅や位相が特に陸上において大きく変化しており、プロセスモデルあるいは統計手法による推定は未だ容易ではないことが伺えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
節電影響による計算の遅れ等もあり、高解像度の計算はいまだ達成されていないが、まずは最初のN2O逆計算を非常に体系化された国際的相互比較プロジェクトの枠組みで行い、そこへの結果提出によりそのコミュニティーへの貢献を果たせた。また解像度やデータも入力方法などにおいてあらたな問題点も見いだせたため非常に有意義な研究を行えたと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように高解像度の逆計算を行っていないのでそれを本年度行う。またベースとなる放出量時空間分布についてもより良いものを準備する方策を現在探っており、その改善により逆計算時の区切った領域内の分布を大きく改善することでより現実的な放出量分布を得ることが可能になると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外学会出張2回:30万x2=60万、国内学会出張2回:5万x2=10万、国内研究打ち合わせ出張:5万x4=20万、論文出版:20万、物品購入:10万、その他雑費あるいは予定外使用、を予定している。
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