2011 Fiscal Year Research-status Report
大気中の腐植様物質の化学構造特性と有害化学物質の挙動
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23710037
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Research Institution | Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
浅川 大地 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (80470251)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エアロゾル / 腐植物質 / 構造特性 / NMR / サイズ排除クロマトグラフィー / 熱分解GC/MS / 有害化学物質 |
Research Abstract |
本研究は、大気エアロゾル粒子に含まれる腐植様物質の動態と構造特性を把握し、有害化学物質の挙動に及ぼす影響を明らかにすることを目的にしている。本年度は腐植様物質の濃度と構造特性の分析を行った。 腐植様物質は水溶性画分と腐植酸様画分、フルボ酸様画分に分けて精製した。腐植様物質の濃度は、概ねエアロゾル濃度に比例していた。また、越境移流によって黄砂や煙霧が発生した際も腐植様物質濃度は増加した。特に煙霧発生時に腐植様物質濃度の増加が顕著であった。 採取した腐植様物質の紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、腐植様物質の炭素濃度当たりの吸光度(280 nm)は季節によって異なった。また、サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量分布測定の結果、腐植様物質の水溶性画分の重量平均分子量は約900~1300であり水圏の腐植物質と類似した値を示した。核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析からも、水溶性画分と水圏腐植物質との類似性は支持された。ただし、水溶性画分のNMRスペクトルにはリグニン由来官能基のシグナルが検出されず、水圏や土壌の腐植物質とは起源が異なると推察された。一方、腐植酸様画分は高分子量で芳香族構造の割合が高く、水溶性画分とは構造特性が異なった。 本研究によって、腐植様物質の構造特性の季節変化や、水圏や土壌中の腐植物質との類似性や相違性が示された。また、腐植様物質のうち、水溶性画分と腐植酸様画分の構造特性は大きく異なり、それらを分別することの必要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大気中の腐植様物質は非常に低濃度であるため、試料の採取と抽出、精製に時間と労力がかかった。そのため、有害化学物質の定量方法の検討がやや遅れている。しかし、それ以外はほぼ計画通りに進行している。有害化学物質の定量方法に関しても、文献調査などにより条件の見当は付いている。 また、本年度後半からは、サンプラーを2台使用して試料を大量に採取する集中観測期間を設け、それによって採取された大量の試料を優先的に抽出、分析している。それ以外の試料は冷凍保存し、後で抽出と分析を一括して実施することを予定しており、労力を分散させることで効率的なデータ取得を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
腐植様物質の濃度と構造特性解析は、予定通り継続する。なお、構造特性解析については、季節ごとに大量に採取した試料を優先的に実施する。有害化学物質は本年度の冬季から試料採取を実施している。次年度も季節ごとに試料を採取して、複数の試料の有害化学物質濃度を同時に分析することで、効率的にデータを取得する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、複数地点のエアロゾル試料の採取を計画していたが、複数地点での試料の大量採取が困難であったため、現在は主に1地点で試料採取を実施している。現在実施している各種の構造特性解析の結果を考慮して、少量の試料で効率的に分析可能な方法を決定した後に、複数地点での調査を実施する予定である。そのため、本年度使用予定であった調査旅費を次年度に使用する予定である。
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