2012 Fiscal Year Annual Research Report
大気中の腐植様物質の化学構造特性と有害化学物質の挙動
Project/Area Number |
23710037
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Research Institution | Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
浅川 大地 大阪市立環境科学研究所, その他部局等, 研究員 (80470251)
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Keywords | エアロゾル / 腐植物質 / 有害化学物質 / PAH / 越境汚染 / PM2.5 |
Research Abstract |
大気エアロゾルに含まれる有害化学物質の越境汚染が問題視されており、その挙動の把握は重要な課題である。一方、土壌や水圏の研究分野では有害化学物質の挙動や変性、生体影響と腐植物質との関連性に関する研究が盛んである。そこで、本研究では大気中でもエアロゾル粒子に含まれる腐植様物質が有害化学物質と相互作用し、その挙動に関与しているという仮説のもとで研究を行った。 先ず、エアロゾル中の腐植様物質の濃度と化学構造特性(官能基組成、構成成分組成、分子量)を調査した。腐植様物質を水溶性画分と腐植酸様画分、フルボ酸様画分に分けて炭素濃度を測定したところ、大阪市内でのそれぞれの平均濃度は0.50、0.15、0.17μgC/m3であり、概ねエアロゾル濃度に比例していた。また、越境移流による煙霧が発生した際は腐植様物質濃度も増加した。腐植様物質の構造特性を土壌や水圏の腐植物質の構造特性と比較したところ、腐植様物質の水溶性画分やフルボ酸様画分は水圏の腐植物質と類似した分子サイズや官能基組成を示した。ただし、脂肪酸類やフェノール類といった構成成分組成から、腐植様物質の起源や生成経路は水圏や土壌の腐植物質とは異なると推察された。また、腐植酸様画分の分子サイズや芳香族炭素割合は水溶性画分とは異なる特徴を示し、環境中での機能性も異なることが示唆された。 次に、季節毎に大気中の多環芳香族炭化水素類(PAHs)濃度を測定し、腐植様物質との関連性を解析した。エアロゾル中の5環以上のPAHsは水ではほとんど溶出されなかったが、アルカリ溶液では約10~30%程度が溶出された。アルカリ溶液で可溶化する腐植酸様画分やフルボ酸様画分とPAHsが会合している可能性が考えられたが、詳細な関係解明には、高時間分解での試料採取やチャンバーでのモデル実験が必要である。
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