2012 Fiscal Year Research-status Report
環境変化に対する沿岸生態系・物質循環の応答機構の解明
Project/Area Number |
23710043
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
吉江 直樹 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (50374640)
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Keywords | 生態系モデル / 物質循環 / 沿岸域 / 底生生態系 / 外洋擾乱 / 気候変動 / 気象擾乱 / プランクトン |
Research Abstract |
本研究は、外洋域の影響を強く受ける開放的な陸棚域(世界のほとんどの沿岸域が該当)において、様々な環境変化に対する生態系・物質循環の応答機構を明らかにし、その応答予測につなげることを目的とする。具体的には、瀬戸内海を対象海域とし、現実に則した生態系・物質循環を再現可能な数値モデルの開発と現場観測を組み合わせることにより、外洋擾乱(外洋水の突発的進入現象等)・地球温暖化などに起因する気象擾乱(突発的な集中豪雨や長期間の梅雨、勢力が極めて強い台風等)、環境規制などに対する生態系影響評価を行う。この知見は、世界の多くの沿岸域に応用することができ、気候変動や人為的な環境変化に対する沿岸生態系の応答予測につながる。 本年度の主な研究実績は以下のとおりである。海底を浮遊生態系から供給された粒状有機物の分解の場として、また、水柱への栄養塩の供給の場としてシンプルにパラメタライズした底層・物質循環モデルを開発し、水柱の浮遊生態系・物質循環モデルと結合させ、沿岸域の生態系・物質循環像の再現を推進した。また、西部瀬戸内海の豊後水道と伊予灘において、晩春から初秋にかけて高頻度・広域の現場観測を実施し、昨年夏季の歴史的な豪雨に伴う沿岸域の海洋低次生態系の応答を捉えることに成功した。その結果、豪雨に伴い大量の河川水が西部瀬戸内海に流入したことにより、低塩分の低密度水が豊後水道の海洋表層を覆い、急潮と呼ばれ沿岸域の汚濁を洗い流す作用を持つ外洋域からの清浄な黒潮系表層水の進入を妨げていた可能性が高い。また、同時に豊予海峡を河口域とみなしたエスチュアリー循環が強化され、底層では外洋域から富栄養な黒潮系亜表層水が底入り潮として進入し、外洋域から沿岸域に栄養塩が大量に供給されていたことが示唆された。これらは、昨年夏季に豊後水道愛媛県沿岸域で発生した史上最悪のカレニア赤潮現象と関連性が高いと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた生態系モデルの開発・結合、モデルによる生態系・物質循環の再現について、それぞれほぼ計画通りに進んでいるため、順調に進展しているといえる。また、当初想定していなかった突発的な大きな環境変化である歴史的な豪雨に伴う海洋生態系・物質循環の応答を現場観測により捉えることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進んでいるため、研究の推進方策を大きく変更する予定はない。 特に、今年度に観測された地球温暖化などに伴う突発的な気象擾乱が沿岸域の生態系に与える影響について、生態系・物質循環モデルを用いて詳細なプロセスやメカニズムについて解析を行う。ただし、何点か今年度に積み残したものに関しては、次年度に実施する予定である。具体的には、未分析の植物プランクトンサンプルの分析に関わる費用、生態系モデルシミュレーションの高速化に必要な計算機購入費用などである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に残した研究費に関しては次年度に使用する予定である。具体的には、未分析の植物プランクトンサンプルの分析に関わる費用、生態系モデルシミュレーションの高速化に必要な計算機購入費用などである。
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[Presentation] TEX86 and seasonal distributions of archaeal membrane lipids across the chemocline in the modern shallow coastal ocean
Author(s)
Moriya, K., M. Kuwae, M. Yamamoto, T. Kunihiro, H. Onishi, H. Hamaoka, M. Saito, T. Sagawa, N. Fujii, N. Yoshie, K. Omori and H. Takeoka
Organizer
JPGU 2012
Place of Presentation
Chiba, Japan
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