2012 Fiscal Year Research-status Report
スラム化する途上国都市からみたエネルギーアクセスと気候変動対策に関する研究
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23710057
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小松 悟 広島大学, 国際協力研究科, 助教 (80553560)
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Keywords | スラム / 気候変動 / エネルギーアクセス / 都市化 / 国際協力 / アジア |
Research Abstract |
本研究は都市化が進むアジア途上国において、都市貧困層が多く居住するスラムを対象として、スラムの空間配置や特徴、スラムに居住する住民のエネルギーアクセスや生活実態に関する調査を実施するとともに、スラムの多様性や拡大化要因を分析することを目的とした。発展段階の異なるアジア途上国の都市部において、様々なタイプのスラムで実証研究を行うことで、スラム解消に向けた政策提言を行い、都市の持続可能な発展、効果的な気候変動対策を実行するための政策手段の提案を目指す。 平成24年度ではバングラデシュ・ダッカにおいてスラムに居住する住民に対し、エネルギーアクセスや消費量、所有する電気機器や交通手段、出身、居住地選択、世帯構成、世帯収入、収入源といったエネルギー利用に関連した包括的な調査項目を設定した家計調査を実施した。スラムの地域的な多様性にも配慮するために、地理的要因の異なる複数の調査地点を設置した。更にスラムでのエネルギー消費の特徴を明らかにするため、各調査地点の周辺でスラムに居住していない住民に対しても調査を実施した。これまでの調査の結果、スラムに居住する住民はより非効率なエネルギー源に依存する傾向があること、とりわけ天然ガスを炊事用ガスとして利用できない世帯は、収入の大部分を薪の購入に充てていることも示された。更にスラムの中でもスラム外と同様のエネルギーアクセスが確保されている地域や、電力供給をはじめとする公共セクターによるエネルギー供給が全く得られていない地域まで非常に格差が大きいことも明らかになっており、スラム居住住民の生活水準向上・エネルギーの効率的利用を目指すためには地域ごとのエネルギーアクセスの多様性に配慮する必要があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、スラム地域にて大規模な住民調査をバングラデシュで実施することができた。更に関連の学会や研究会を通じて、エネルギー需給や気候変動対策に関して、専門家との意見交換や議論を通じて、情報収集に努めることができた。半面スラムの多様性に十分配慮した調査を実施した結果、他のアジア諸国での調査が実現できなかった。最終年度である平成25年度はフィリピンでの調査を実施し、これまで得られた情報や統計資料、家計調査での結果を含めて最終的な分析結果を取りまとめることを目指すが、最終成果に向けた準備が本年度はできていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、統計データや家計調査での分析結果を取りまとめ、スラムの実態把握やスラムに居住する住民の生活実態やエネルギーアクセスのデータ分析により、最終的にスラムの拡大がどの程度都市での経済的な損失につながるのかを示す。更に住民のエネルギーアクセス改善、スラム解消を目指した途上国都市での持続可能な発展や気候変動対策の在り方に関して、提言を取りまとめることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フィリピンでのアンケート調査及び現地専門家への聞き取り調査を実施する予定である。また成果の発表や研究者とのネットワークを深め更なる情報を集めるために、持続可能なエネルギー需給・環境・国際関係に関する、国内外の学会や研究会にも積極的に参加・発表して情報収集や成果の発信に努める予定である。また必要に応じてソフトウェアや消耗品購入にも充てる。
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Research Products
(12 results)