2011 Fiscal Year Research-status Report
廃プラスチックの広域化処理における政策決定モデルの構築に関する研究
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23710061
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
戸敷 浩介 静岡県立大学, 付置研究所, 助教 (00542424)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ごみ処理広域化 / 廃プラスチック処理 / 地理情報システム / エネルギー回収 / リサイクル / 温室効果ガス削減 |
Research Abstract |
今年度は、GISデータベースを活用したごみ処理区域の広域化におけるエネルギー・環境等への定量的な影響評価手法の原案作成を行った。 まず、静岡県下の各市町村の一般廃棄物に関する最新のデータを収集・整理し、これらのデータを基に、地理情報システム(GIS)上に一人一日当たりの可燃ごみ等の排出量、及び容器包装プラスチックの分別収集量を町丁目単位で整備した。なお、可燃ごみに関しては、紙類、厨芥類、廃プラスチック類など組成ごとにデータを入力している。これにより、静岡県下の一般廃棄物における廃プラスチックの排出特性につき、地理的な分布を把握することが可能になった。このようにして構築したGISデータベースを用いて、仮に静岡市とその西隣の志田地区のごみ処理区域を広域化し、静岡市の清掃工場のみで焼却処理を行った場合の影響につき、定量的な評価を行った。その結果、エネルギー収支では40[TJ]の増加で、これは約11.1[GWh]に相当する。また、二酸化炭素排出量は1,338[ton-CO2]、清掃工場の稼働率は約70%から約95%まで上昇することが分かった。これらの結果から、広域化による電力増加量の二酸化炭素排出原単位は、約0.126[kg-CO2/kWh]と算出され、ごみ処理区域の広域化は、既存設備を効率よく使用した低環境負荷の新たな電源の創出という見方もできることが示された。また、GISデータベースを用いたごみ処理区域の広域化に関するエネルギー・環境等への定量的な影響評価手法に一定の目途がついた。 また、静岡市に対しては、上記の広域化に関する試算結果を基にヒアリング調査を実施した。その結果、特に静岡市のような大規模な自治体では、現状のままでも十分にごみ処理行政が維持できることと、これまでの自区内処理の経緯から、自ら広域化を推し進める必要性を感じていないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な目的は、1)静岡県を事例としたごみ処理区域の広域化によるエネルギーや環境等への影響についての、GISデータベースを用いた定量的な評価、2)構築したGISデータベースを用いて、ごみ処理広域化の下での廃プラスチックの分別・処理のあり方を明らかにすること、3)本研究の成果物として、ごみ処理広域化の下での焼却処理、廃プラスチックの分別・処理方法等に関するエネルギー・環境影響等の定量的評価手法の確立、の3つである。この内、平成23年度では、特にGISデータベースの構築と、これを用いた具体的な評価の実施による影響評価手法の確立を中心として研究を進めており、研究実績の概要に示したように一定の成果が得られたと考えている。その中でも、静岡県下の市町村の一般廃棄物処理におけるエネルギー収支及び環境負荷については、ごみ処理広域化の前のベースラインを定量的に評価することが出来るようになった。 ただし、23年度では、現在の自区内処理の下でのごみ処理に関する経済性については、データの収集と整理に留まっており、ごみ処理区域の広域化による経済性への影響について、その影響を定量的に評価するまでには至っていない。これまでの研究では、ごみ処理区域を広域化した場合のスケールメリットの評価と、例えばごみ収集車の走行距離の延長による燃料費の増加のデメリットなど、検討すべき項目を整理しているが、その評価手法については、事例を挙げて検討し、精度向上を目指す必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、まず初めにごみ処理区域の広域化の下で、経済性に関するスケールメリットとデメリットについての評価方法の確立を目指す。23年度の研究において、経済性について検討すべき項目などについては既に整理しているため、24年度では実際に静岡市と志田地区の事例などを用いた定量的な評価を行い、またその結果を基に市町村等へのヒアリング調査等を実施することで、経済性に関する評価手法の精度向上を目指す。 次に、静岡県下におけるごみ処理区域の広域ブロックの形成についてのシナリオの作成作業を行う。特に、プラスチック分別等については市町村ごとにその方法が大きく異なっていること、各市町村が有する清掃工場の稼働年月や稼働率などを考慮し、広域ブロックのシナリオを作成する。また、シナリオ作成の段階では、各市町村へのヒアリング調査などを行い、広域化に対する市町村の意識、広域化を検討する際に市町村が重視する項目等について明らかにする。 また、焼却処理の広域化が既に実施されている東京二十三区の事例を参考にするため、東京都各区、東京二十三区清掃一部事務組合、市民団体等に対し、ヒアリング調査を行う。特に、東京二十三区ではプラスチック分別に関しては各区でその考え方が異なっている一方、焼却処理を担当する一部事務組合では廃プラスチックを可燃ごみに指定し、サーマルリカバリを積極的に行っている。そこで本年度では、各自治体における分別方法と、焼却処理の広域化との整合性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度中に英語文献及び書籍を購入予定であったが、書店等に問い合わせたところ、日本国内には在庫がなく、海外からの取り寄せにも時間がかかるとの回答だったため、約2万円を24年度に繰り越すことになった。 24年度では、上記の研究計画を実施するため、特に静岡県内の市町村、及び東京都等へのヒアリング調査にかかる旅費等の費用について、本研究費を使用する。また、本研究で使用する地理情報システムArc GISの保守契約、及び最新の空間地図データ、解析機能強化のための追加モジュールの購入等に、本研究費を使用する。また、本研究の成果発表のための学会等への参加に、本研究費を使用する。
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Research Products
(1 results)