2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23710065
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩田 裕樹 福岡工業大学, 社会環境学部, 助教 (90511692)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 自主的取り組み / 環境パフォーマンス / イノベーション |
Research Abstract |
環境問題への企業の自主的行動に関する分析を研究課題としており、2011年度は、企業の環境問題への自主的取組に関する実証分析を行うことを目的としていた。2011年度の研究実績として、企業活動における環境配慮行動が企業の利潤や競争能力にどのような影響を及ぼすのかという問題について実証分析を行った。この研究では、企業による環境問題への取り組みが財市場、資本市場における評価(経済パフォーマンス)に対しどのような影響を及ぼすのかを明らかすることを目的としたものである。特に、本研究では、環境への取り組みを温暖化問題への対応と廃棄物問題への対応の2つに分類した。この分類を行う意味は、温暖化問題が企業の自主的取組であるのに対し、廃棄物問題は法規制下での行動となる点、さらに環境問題の種類により関連するステークホルダーが異なると考えられるため、そうしたステークホルダーの差異が経済パフォーマンスにどのような影響を及ぼすかを明らかにできるためである。分析手法についてはパネル分析を用いた。分析の結果、企業活動が多様な環境問題と関連する中で、企業がどの環境問題に取り組むかにより企業の経済パフォーマンスに及ぼす影響は異なること、自主的取組により企業は無形資産の価値を高めることなどを明らかにした。自主的取組のもたらす効果を明らかにした点など本研究の結果は政策的にも重要であると考えられる。また、この研究論文は海外ジャーナルEcological Economicsに掲載された。2011年度は上記の研究に加え、環境クズネッツ仮説について、エネルギー産業の構造を考慮した分析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2011年度の目的として予定していた内容は、環境問題への企業の自主的取組に関する実証分析を行うこと、その成果を海外の雑誌への掲載や学会・研究会において報告することなどで社会に発信することとしていた。この目的について、本年度は設定したテーマに即した内容で分析を行い、研究会等で報告を行うことができた。また、作成した論文"How Does Environmental Performance Affect Financial Performance? Evidence from Japanese Manufacturing Firms"は、海外雑誌Ecological Economicsに掲載された。また、上記した研究に加え、エネルギー産業の構造を考慮した環境クズネッツ仮説(経済発展の初期段階は環境負荷が増加するが、その後、経済発展がある段階に達すると、環境負荷が減少するという、環境負荷と経済発展の逆U字関係)に関する研究を行い、その成果が海外雑誌に掲載された。以上より、当初計画していた内容に以上に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度の研究課題の方針は、環境問題への企業の自主的取組に関する理論分析を行うことである。特に、自主的取組が環境問題への対応に関するイノベーションの発生に対しどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを研究することを展望している。環境への取り組み伴うイノベーションの実現と自主的取組の関係についての分析は、これまで十分に議論されていない分野である。他方、イノベーションの実現は社会に対し大きな便益をもたらす可能性があり、自主的取組がイノベーションの発生に対しもたらす効果は政策的にも非常に重要である。現在、分析手法として企業と政府をプレーヤーとする段階ゲームによる分析を行うことを予定しているが、研究の完成度を高めるため、既存研究のサーベイをさらに行うことが必要であると考えられる。特に現在は、将来的規制の脅威が企業行動に与える影響について、プロセスイノベーションとプロダクトイノベーションについての既存研究をサーベイする必要があると考えている。サーベイ終了後、モデル分析を行い、結果を導く。分析の実行にあたっては、研究会や学会等で多くの議論が行われる必要があると考えられる。そのため、積極的に報告の機会を設け、研究を進展させることが重要である。また、研究の成果は論文としてまとめ、ジャーナルへ投稿を行うこと、国内外の学会や研究会等で報告を行うことを通じて社会に伝達していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度の未使用額は、当初の研究費使用見込額と実際の執行額の差により生じたものであるが、研究は順調に進んでいる。未使用額も含め、2012年度の研究費の使用計画としては、消耗品として書籍、トナー等の購入費として8万円資料収集、研究報告(研究会・学会への参加)などの旅費にとして40万円その他の項目として英文校正に2万円を使用する計画である。
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