2012 Fiscal Year Annual Research Report
放射線耐性細胞ではなぜオートファジーが誘導されにくいのか?
Project/Area Number |
23710066
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桑原 義和 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (00392225)
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Keywords | 臨床的放射線耐性 / ROS / 過酸化水素 |
Research Abstract |
本研究では、がんの放射線療法で問題となる放射線耐性細胞の放射線耐性のメカニズムを明らかにするために、標準的な放射線療法である2Gy/日のX線を30日以上照射し続けても増殖する臨床的放射線耐性細胞(clinically relevant radioresistant cell; CRR細胞)を用いて解析を進めた。 10GyのX線照射後、継時的に細胞内の活性酸素種(reactive oxygen species; ROS)を蛍光色素を用いて検出すると、親株ではROSの発生が見られたのに対して、CRR細胞ではその発生が見られないことを明らかにした。CRR細胞にはなんらかのROSの排除機構が存在しているため、X線照射によってROSの発生が見られないのではないかと考えた。 CRR細胞の過酸化水素(H2O2)への感受性を解析すると、その親株に比べて明らかな耐性を示した。そこで、H2O2の代謝に関与していることが知られているカタラーゼ(catalase)の発現を解析した。その結果、CRR細胞ではその親株に比べてmRNAの発現レベルが高いことを明らかにした。しかし、siRNAでカタラーゼの発現を抑制してもCRR細胞のX線感受性には変化は見られなかった。また、複数の細胞株からH2O2耐性細胞を樹立してX線への感受性を解析した結果、H2O2耐性細胞はその親株に比べてX線に耐性を示さなかった。以上から、CRR細胞がH2O2に耐性を示すことは、CRR細胞の形質の一つであり、放射線耐性の要因ではないことが示唆された。さらに、この耐性にカタラーゼの関与は否定された。 オートファジーは、細胞内のROSの上昇によって誘導されることが知られている。放射線耐性細胞では、X線照射後にROSの上昇が見られないためオートファジーが誘導されないのではないかと考えられる。
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Research Products
(6 results)