2011 Fiscal Year Research-status Report
放射線照射条件と細胞に依存した細胞応答とゆらぎ機構によるP53機能の解析
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23710069
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河合 秀彦 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (30379846)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射線 / 細胞応答 / 照射線量率 / p53 / ゲノム安定性 |
Research Abstract |
本申請研究課題では、ヒトのiPS細胞を含む様々な種類の細胞の放射線応答機構とその中でのDDR-p53経路の機能解析、及び、持続的な低LET放射線照射培養条件下での細胞の種類に依存したMDM2/MDMX-p53の機能解析と次世代シークエンスシステムを用いた網羅的遺伝子発現解析を行うことによってゲノム不安定性に対する細胞種に依存した細胞応答の分子機構を明らかにする事を研究の目的としている。 本申請研究課題の目的を達成する為、I. 細胞の種類に依存したp53の安定性制御の分子機構解析、II. 放射線照射に対するp53の修飾及び転写機能の解析、III. アポトーシスと細胞周期制御機構におけるのp53の機能解析、IV. γ線照射と紫外線照射に対する細胞応答の比較解析、V. 次世代シークエンスシステムを用いたトランスクリプトームの5つの実験計画を実施している。初年度である平成23年度は、研究計画に基づいて以下のような研究成果を得た。I.p53制御因子のsiRNA解析により、細胞内でのp53応答性のゆらぎが制御因子間の相互作用で行われていることを確認した。この結果から、p53の制御が異なる細胞の有するp53制御因子の分子量の比によって制御されていることを見出した。II.放射線の線量率依存的なp53の局在、活性について検討し、その結果放射線の線量率に依存したp53の機能が存在する事を明らかとした。III.持続的な放射線照射により、細胞種依存的な細胞周期分布の変化と応答性が存在することが明らかとなった。IV.γ線と紫外線の応答性の変化を経時的に解析した結果、それぞれに依存的な細胞周期の進行とアポトーシスが観察された。V.ヒト正常細胞を用いた線量率依存的なトランスクリプトーム解析を行い、そのデータ解析を行った。 研究実施計画に基づき、次年度の研究に向けて意義のある結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成23年度は、研究計画通りに研究を進めた。達成度としては、概ね順調に進展している。研究成果としては、特に、持続的な低-中線量率放射線照射下で細胞は照射線量率に対し、細胞種に依存して異なる細胞応答性を有する事が明らかになったことは、意義があるものと考える。それらの細胞応答性は、細胞の種類に依存して、応答機構そのものと感受性に明らかな違いが存在することが明らかになった。iPS細胞が有する細胞応答の特性も明らかとなったが、最終年度である来年度にその特性の分子機構を解析する予定である。また、次世代シーケンサを用いた解析によって、照射線量率依存的な細胞応答機構の違いが遺伝子発現量と相関しているものであることも明らかとなった。次年度の研究計画の遂行によって、異なる種類の細胞が有する放射線照射に対するゲノム安定性維持機構のメカニズムを解析することで、本研究課題の目的であるゲノム安定性機構における細胞応答機構の役割が明らかになるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は研究計画に基づいて研究を遂行し、予定通りの結果を得るこた。引き続き最終年度である平成24年度も申請した研究計画通り、I. 細胞の種類に依存したp53の安定性制御の分子機構解析、II. 放射線照射に対するp53の修飾及び転写機能の解析、III. アポトーシスと細胞周期制御機構におけるのp53の機能解析、IV. γ線照射と紫外線照射に対する細胞応答の比較解析、V. 次世代シークエンスシステムを用いたトランスクリプトームの5つの実験計画を遂行する。現在までのところ、研究計画の遂行に問題点や課題はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度では、実験計画に基づいて、iPS細胞及び初代培養正常線維芽細胞から目的の遺伝子を発現する細胞の作製を行ったが、実験には、平成23年度予算に計上したNeonTM 遺伝子導入装置(Invitrogen社)を含む異なる遺伝子導入装置のデモ機を用いた。その結果、用いた細胞のうちiPS細胞においては、当初期待された遺伝子導入効率を得ることができず、より遺伝子導入効率の高い遺伝子導入装置NEPA21(Nepagene社)のデモ機を用いて実験した結果,期待した遺伝子導入効率を得ることができた。この結果から、平成23年度に購入予定であったNeonTM 遺伝子導入装置の購入は行わず、平成24年度の実験を計画通りに行う為に、備品としてNEPA21の遺伝子導入装置の購入を平成24年度に行うこととした。なお、この機器購入の変更によって実験計画に変更は生じない。
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[Journal Article] Asymmetric nature of two subunits of RAD18, a RING-type ubiquitin ligase E3, in the human RAD6A-RAD18 ternary complex.2012
Author(s)
Masuda, Y., Suzuki, M., Kawai, H., Suzuki, F., and Kamiya, K.
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Journal Title
Nucleic Acids Res.
Volume: 40(3)
Pages: 1065-1076
Peer Reviewed
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[Journal Article] The p53 inhibitors MDM2/MDMX complex is required for control of p53 activity in vivo.2011
Author(s)
Huang, L., Yan, Z., Liao, X., Li, Y., Yang, J., Wang, ZG., Zuo, Y., Kawai, H., Shadfan, M., Ganapathy, S., and Yuan, ZM.
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.
Volume: 108(29)
Pages: 12001-12006
Peer Reviewed
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