2012 Fiscal Year Research-status Report
放射線橋かけ技術を利用した新規ポリマーゲル線量計の開発
Project/Area Number |
23710073
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
廣木 章博 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (10370462)
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Keywords | 多糖類ゲル / ヒドロキシプロピルセルロース / 放射線橋かけ技術 / 電子線 / γ線 / ポリマーゲル線量計 / 白濁度合い / 吸光度 |
Research Abstract |
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の濃度が10~30 wt%のペースト状サンプルに電子線を最大70 kGy照射し、ゲル線量計の母材となる透明なHPCゲル膜を得た。得られたHPCゲル膜を2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(9G)、テトラキスホスホニウムクロライド(THPC)から成る放射線検出液(昨年度選択した組成)に含浸し、膨潤したゲル膜をPE-ナイロン袋に入れ脱気密封包装し、ポリマーゲル線量計を作製した。ポリマーゲル線量計に、コバルト60線源からのγ線を所定線量照射した。白濁度合いの評価は、吸光度測定により行った。 ポリマーゲル線量計の白濁度合い(吸光度)は、線量増加に伴い増加し、膨潤度が高いHPCゲルほど、同じ線量では高い吸光度を示した。線量に対する吸光度の増分である放射線感度(Abs./Gy)は、膨潤度が高いゲルほど高いことが分かった。HEMAと9Gの組成比が(I)1:4 と(II) 4:1の放射線検出液から作製したポリマーゲル線量計の線量応答性を比較すると、(I)のゲル線量計の方が、放射線感度が高いことが分かった。200-800nmの吸光度測定の結果、(II)は紫外域にピークを示し、線量増加に伴い長波長側にシフトしたのに対し、(I)は、同じスペクトル形状で吸光度の増大を示した。二官能性モノマーである9Gの濃度が高いほど、分岐鎖構造が多くなり、粒径の小さいポリマー生成量が増加した結果、放射線感度が高くなったと考えられる。 また、PE-ナイロン包装材では酸素が透過してしまい、保管期間1週間程度で白濁度合いが著しく低下することが分かった。そこで、ハイガスバリア性のエバール含有包装材に変えることにより、保管期間4週間でも作製直後(0日)と同程度の性能を維持できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲル中に生成するポリマーの粒径や濃度の評価が必要であるが、ポリマーゲル線量計の白濁化に及ぼすHPC濃度や包装材の影響を明らかにし、ポリマーゲル線量計の高感度化・実用化の見通しを得ることができたことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
HPCゲル中に生成するポリマーの粒径を粒径アナライザーにより調べるとともに、吸光度と粒径や濃度の関係を理論的に計算し、ポリマーゲル線量計の線量応答性を考察する。また、作製したポリマーゲル線量計にX線や重粒子線照射を行い、線質効果を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬(モノマー類)や測定用器具などの研究消耗品の購入をはじめ、医学物理学会や放射線化学会などで発表するための旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(6 results)