2012 Fiscal Year Research-status Report
乳腺サイクルにおけるDNA修復遺伝子の役割と放射線発がん機構の解明
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23710075
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
臺野 和広 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 研究員 (90543299)
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Keywords | 乳腺 / 発生・分化 / 放射線 / DNA損傷修復 |
Research Abstract |
乳腺は、放射線発がん感受性の高い組織である。これまで、乳がんのリスクが幼少期や思春期の被ばくで高いことや、妊娠・出産を経験することによりリスクが低下することが示唆されているが、それは乳腺が増殖・分化と脱分化・退縮のサイクルを繰り返すことができるユニークな器官であり、その過程で放射線に対する応答が大きく異なるためであると考えられる。しかしながら、それら放射線感受性の違いをもたらす分子基盤は依然として不明である。 今年度は、これまでに見出した、乳がん原因遺伝子BRCA1と結合し、DNAの損傷修復に関わる遺伝子(10種)の乳腺発生・分化過程および放射線照射による発現変動を動物個体レベルにおいて検証すると共に、昨年度に樹立したBRIP1遺伝子ノックダウン細胞を用いて、同遺伝子の乳腺の発生・分化および癌化における役割を明らかにすることを目的とした。具体的には、幼若期および思春期にガンマ線(5 Gy)全身照射を行ったラットより採取した乳腺組織標本(照射後1~48時間後)を用いて、免疫組織化学染色法による候補遺伝子(10種)およびDNA損傷マーカー等の検出を行った。また、樹立したBRIP1遺伝子ノックダウン細胞の解析を行い、BRIP1遺伝子の機能が抑制された細胞を基底膜マトリクス存在下で3次元培養すると、腺管構造のサイズの増大や形態異常、内腔空間不形成といった癌の初期病変に観察されるような異常が引き起こされることを明らかにした。今年度の研究結果は、乳腺の発生・分化にDNA損傷を修復する遺伝子が機能していることや、発生・分化の過程で機能するDNA損傷修復機構や修復活性の違い、発がんへの関与を明らかにするために有益な基礎的情報を提供するために重要である。特に、BRIP1遺伝子ノックダウン細胞の放射線感受性や分子解析を行うことで、乳腺の発生と放射線誘発乳がんの接点が明らかになると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳腺における発生・分化過程および放射線照射による候補遺伝子10種全ての詳細な発現変動解析は、それらを検出するための実験条件の検討に予定よりも多くの時間を要したためやや遅れているが、昨年度に見出したBRIP1遺伝子については、その遺伝子の発現を遺伝子操作により抑制した乳腺細胞を作製し、乳腺の発生・分化および放射線感受性への関連性を示す結果が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、収集した乳腺組織サンプルを用いて、乳腺における発生・分化過程および放射線照射による候補遺伝子の詳細な発現変動解析を実施する。また、遺伝子操作により、BRIP1遺伝子を始めとするDNA損傷修復遺伝子の発現を制御した乳腺細胞を作製し、それら細胞の三次元培養系を用いて、乳がんの前がん病変から観察されるような乳腺の組織構造の異常の発生や、放射線感受性の変化を検証する。その後、動物個体レベルにおける解析を行い、発生・分化および放射線感受性、さらには、発がんにおける候補遺伝子の関与を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、BRIP1遺伝子を始めとするDNA損傷候補遺伝子について、それらの発現を遺伝子操作により制御した乳腺細胞の作製を行う。また、作製した乳腺細胞の三次元培養系および収集した乳腺組織サンプル用いて、候補遺伝子やDNA損傷応答マーカーの検出および定量を行うことにより、乳腺の発生・分化過程における候補遺伝子の発現変動と放射線感受性の関連性を明らかにする。
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Research Products
(2 results)